2024年 4月 26日 (金)

紳助引退騒動「マンガやね」一笑に付す山口組系元最高幹部

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   週刊誌は世の中を映す鏡である。いまの世の中は週刊誌を読むとどう見えてくるのだろうか。3・11以降は当然ながら東日本大震災、とくに原発に関する記事で溢れかえった。

   大震災から半年が過ぎようとしているが、いまだがれきの処理は進まず、原発事故の処理のほうもメディアが頻繁に伝えなくなっただけで、安定した状態からはまだほど遠い。1、2、3号機は大量の水を注入しているから温度は安定してきているようだが、高濃度の放射能汚染水が漏れ続けているはずだし、溶け落ちた核燃料がどうなっているのかわからないから、いつ爆発が起きても不思議ではない。まだまだ予断を許さないのだ。しかし、このところ週刊誌から原発関連の記事が消えつつある。

メディアから消え始めた原発報道―再稼働へまっしぐら

   今週の「週刊朝日」は福島第一原発完全ルポと謳って、「原子炉建屋の中は木っ端みじんだった」と8月末に東電幹部の案内で原発の敷地内へ入ったことも含めてルポしている。その他にも「元原発作業員らが語る被曝の現実」「セシウム不安で21世紀の『米騒動』勃発」など盛りだくさん。

   「サンデー毎日」も「関東圏180地点放射能汚染地図 都心に潜むチェルノブイリ級」と、埼玉三郷市は一時移住レベルだと警鐘を鳴らしているし、「フライデー」は「カザフスタン共和国セミパラチンスク核実験場『数十万の被爆者たち』」、「AERA」には「私の被曝量を計算する」がある。

   だが、放射能は怖い怖い報道で部数を伸ばしてきた「週刊現代」には放射線の影響に詳しい大学準教授2人の対談「被曝と遺伝 本当のことを話そう」があるだけだし、「週刊ポスト」「週刊新潮」、現代とともに煽り派の先頭を切っていた「週刊文春」には1本もない。

   ポストの巻頭大特集は「〈全国民必読!〉天皇家の健康法 医療・食事・日常生活」だが、長い間週刊誌を見てきているが、これほど「なぜ、いまこの特集をやらなければいけないのか」がわからない記事も珍しい。

   もちろん発足した野田佳彦内閣への批判記事はどこもやっているが、各誌が最も力を入れているのが島田紳助スキャンダルである。現代の編集者が私にこういった。

「放射能が危ないとやってきて、おかげさまで部数も好調でした。だが、他誌でもガイガーカウンターをもってあちこち測りだしたので、さすがにそれで部数を維持するのは難しくなってきた。次にどうするか悩んでいたところに神風のような紳助スキャンダルが起きて、最初の号は完売でした。ですが、この話がどこまでもつのか。原発、紳助の次にどんな記事をやればいいのか、難しいところです」

   というわけで、日本最大の問題である原発報道は隅に追いやられ、かつて第五福竜丸の死の灰やJCO事故のあとのようにメディアから消えて行き、原発再稼働へとならないだろうか。

   今夏、日本中を巻き込んだ節電フィーバーのおかげもあって、原発がなくても電力は十分に足りたのに、東京電力は来年に値上げを検討していると、無批判にマスメディアが報じている。だが、この報道に違和感を感じるのは私だけではないはずだ。節電だ、料金値上げだと恫喝して、何としても原発を再稼働に持ち込みたい東電、官僚、政治屋たちがいる。

   野田総理が臨時増税をぶちあげれば、大新聞はその是非を云々するのではなく、党内の批判をどうかわすのかという政局へ読者の目をもっていこうとする。この国のジャーナリズムは、福島第一原発と同じで、正常に機能しなくなっている。

黒い交際で取り沙汰されるあのお笑い芸人

   さて、原発事故より重要な島田紳助スキャンダル報道は先週の文春が充実していたが、今週は現代、文春が競い、週刊新潮がグラビアも含めて「潜伏中の『紳助』を発見!」と気を吐いている。

   この問題の核心は、紳助を含めた吉本興業のお笑い芸人たちと暴力団との黒い交際がどこまでだったのかにある。現代は「山口組元幹部が実名ですべて明かす『紳助に頼まれて処理したこと、紳助邸でのバーベキューパーティ、そして浜田のこと』」で、片岡昭生元山口組山健組本部長にインタビューしている。彼が山健組のナンバー3だったとき、紳助が親しくしている極心連合会の橋本弘文会長がナンバー2にいた。片岡元本部長は、10数年前に橋本会長から頼まれ、紳助が右翼団体と揉めて困っている件を解決してやった後、紳助から誘いがあり、自宅のバーベキューパーティに呼ばれて風呂にも入ったそうだ。その片岡元本部長は今回の紳助引退に関してこういっている。

「もともと極心の会長(橋本会長のこと=筆者注)は吉本が好きや。お笑いが。紳助と極心の会長の関係を示す写真や手紙があるということがマスコミで報じられてますが、身近におったからわかる。あれ、嘘やおまへんわ。事実やと思う」

   したがって、紳助が会見で「これぐらいはセーフやと思った」発言には「マンガやね」と一笑に付す。

   注目は、吉本の人気お笑い芸人ダウンタウンの浜田雅功のトラブルも収めたと発言していることだ。2006年6月26日、フジテレビ制作の「HEY! HEY! HEY!」で、司会の浜田がゲストの宇多田ヒカルに対して、倉木麻衣は宇多田のパクリではないかという趣旨の発言をしたらしい。それに対して、倉木の所属事務所はもちろんのこと、右翼団体もテレビ局周辺に押しかけ抗議して騒動になった。吉本から暴力団関係者と見られるイベント会社の社長に話があり、その社長から聞いて、片岡元本部長がその件も収めた。しばらくたってから、吉本の林裕章社長(当時)から招待があって、神戸のクラブで1対1で会ったという。この証言から浮かび上がってくるのは、私が前々からいっているように、紳助だけではなく、暴力団との不適切な関係は吉本興業全体の体質の問題であることだ。

警察庁長官「手は緩めず法令違反のネタがあれば必ず挙げろ」

   新潮は沖縄から北へ車で1時間ほど行ったところにある恩納村(おんなそん)に紳助がいたと書いている。リゾートホテルが建ち並ぶ村の高台のマンションの窓に、紳助らしいシルエットが写っている。彼は、マネジャーや夫人を連れて来ているようだ。9月5日11時。その部屋に紳助が経営するショップのスタッフも集まり、円陣を組み、爪先立ちになって踵を上げ下げしたり、肘に片方の腕をあてがい、手前に引っ張るなどストレッチ体操を1時間にわたってやっていたそうだ。紳助が外出した姿を見た者はいない。

   紳助は引退したからといって安穏に暮らせるわけではないようだ。大阪府警捜査4課の刑事がこう語っている。

「暴力団壊滅に並々ならぬ決意を示す安藤隆春・警察庁長官から、『紳助が引退したからといって、手は緩めず、捜査を続けろ。法令違反のネタがあれば、何でもいいから、紳助を挙げろ』と発破をかけられているから、こっちも必死なんや」

   新潮は「あの紳助が蒼くなった『山口組五代目』の『1000万円腕時計』」で、吉本関係者にこういわせてもいる。

「吉本を牛耳る『怪芸人』中田カウスが、ついに島田紳助を葬り去った。それが今回の騒動の真相やで」

   カウスが山口組渡辺芳則組長に紳助を紹介し、渡辺組長から高価な腕時計をもらったのに、高すぎるからとカウスに返そうとモメたことがあったというのだ。上記の吉本関係者は「吉本の芸人、社員は皆『なんでカウスが辞めんで紳助が辞めなアカンねん』と思てるわ」と話す。この騒動の結末はまだまだ先になるのではないだろうか。

   新潮はタイミングよく、10月1日から東京都や沖縄で施行され、全国で出揃う「暴力団排除条例」についてのケーススタディーを特集している。それによれば、先に施行されている福岡県では、県内の建設業者70社が集まって定期的にゴルフコンペを開催していたが、そこに山口組系組長や指定暴力団・道仁会系の組長が参加していたため暴力団との関係が深いと判断され、9社を県警のホームページで公表した。そのために下水工事を請け負っていた河野組は県や福岡市の公共工事から閉め出され、資金繰りが悪化して2か月後に倒産してしまった。たしかに自営業者、工務店、飲食店経営者は必読である。

山岡賢次「国家公安委員長」というブラックジョーク

   野田内閣が動き出したが、週刊誌による各大臣の「身体検査」はそうとう厳しい。なかでも親小沢一郎の山岡賢次国家公安委員長に対するバッシングがすごい。新潮は「史上最低の『山岡国家公安委員長』の革マルと裏金要求」、文春は「山岡国家公安委員長の『黒い履歴書』選挙買収疑惑 マルチ商法 革マル」。なかでも革マルとの関係追及が鋭い。

   極左暴力集団(懐かしいいい方だ)の革マルと縁が深いとされるJR総連やJR東労組と山岡国家公安委員長が極めて親密な関係にあるという。彼が代表を務める民主党栃木県第4区総支部の収支報告書には、一昨年、それぞれから30万円、計60万円の寄付がなされていると新潮は書く。2005年には警視庁公安部が総連や東労組への家宅捜索を実施したところ、当時野党第一党だった民主党議員がヒアリングと称して警視庁警備局公安課極左対策室長らを呼び、山岡は捜査の中身はいえないのか、あまりにも自己中心的な捜査だなどと総連東労組寄りの発言を繰り返したという。

   新潮は「こんな人物が、革マルを監視すべき警察行政の要である国家公安委員長に据えられるとは、世も末のブラックジョークと嗤うしかあるまい」と嘆いている。

   また、消費者担当大臣も兼ねているため、マルチ業界から献金を受けていたことを両誌で追及され、記者会見でこう釈明せざるをえなくなった。

「山岡賢次消費者担当相がマルチ商法企業から献金を受け取っていた問題について、山岡氏は8日午前の記者会見で『(献金の)中身を一つ一つ見ているわけではない。合法的に運営されているビジネスだという認識はあるが、誤解されないように、もう受けないようにしている』と釈明した」(9月8日のasahi.comより)

   この内閣も叩けばホコリが出そうなデージン(大臣)がいっぱいいるようだ。

掛布雅之「無一文」、横峯良郎「賭博議員」

   この他の注目記事は、ミスタータイガースといわれた掛布雅之の債権者集会での惨状をルポした「もはや無一文という『掛布雅之』債権者集会の一部始終」(新潮)、これほどひどい参議院議員はいないだろうと思わざるをえない「賭博常習者の『横峯良郎議員』を赤絨毯から追放せよ!」(新潮)。同感である。

   「がん保険」に加入しようとお悩みの人必読は、「徹底研究 がん保険 損か得か」(現代)。がん保険は「がんになったときにまとまったおカネをくれる保険が一番いい」(保険コンサルタント後田亨氏)そうである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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