更年期症状の小泉今日子のびのび…大人の男女の幸せなケンカ
<最後から二番目の恋(フジテレビ系木曜よる10時~)>久しぶりに、落ち着いた日常の何気ない会話を楽しむドラマに会った。出演者たちもみんな演技力と存在感のある役者たちで、安心して見ていられる。
テレビ局のプロデューサーで45歳の千明(小泉今日子)は、独身で恋人もなく、職場でも崖っぷち。更年期症状で倒れたのをきっかけに、生活を変えようと鎌倉の古民家に引っ越す。不規則で忙しい仕事なのに、鎌倉くんだりから江ノ電に乗って都心まで通勤し、おまけにご近所と交流する暇なんてあるのかしらと突っ込みたくなるが、そこはまあ、そういうことで、と。
隣は妻に先立たれた市役所職員・長倉和平(中井貴一)の家だ。年代物らしい家には、和平の娘・小学生のえりな(白本彩菜)のほか、弟・真平(坂口憲二)、その双子の妹・万里子(内田有紀)が住んでいる。真平は家を一部改装してカフェを開いている。
さらに、家出してきた和平のもう1人の妹・主婦の典子(飯島直子)や、千明の女友達・祥子(渡辺真起子)、啓子(森口博子)が加わって、チマチマとした騒動をくり広げるわけだが、そのやりとりが面白いのだ。岡田惠和の脚本はさすが。
顔を合わせれば口ゲンカになる和平と千明。恋を自覚する前、惹かれる気持ちに不安になって相手に反感をもつからケンカになる。古今東西、永遠に交わされる男と女の最も幸せなケンカだ。
達者な役者たちのなにげない会話楽しい
小泉今日子は伸び伸びと等身大の役を楽しんでいるようだ。中井貴一は普通だけど、魅力的な中年男を明るく演じている。また、更年期適齢期の女たちのホンネのおしゃべりも芸達者な女優たちの競演が楽しい。
気になるのは弟の真平。演じる坂口憲二は大好きな俳優の1人だ。あの不朽の名作「I.W.G.P(池袋ウエストゲートパーク」(2000年)での「ドーベルマン山井」の鮮烈な姿は衝撃的だった。鼻と耳のピアスをチェーンでつなぎ、金髪に黒のタンクトップ。暴力しかない男だが、しまいには叩きのめされ、金網のフェンスをつかんで血だらけでくずおれる。セリフはほとんどなかったにもかかわらず、彼の出るシーンは圧倒的な迫力で満たされた。
それがこのドラマでは、できるだけ多くの女性を幸せにしなければならないと思い込んだイケメン天使とは…。思えばいろいろな役をやってきたね、憲二くん。でも、初対面同然の女性に、気軽に「最後まで優しく」しちゃうって、どういうことよ。何か深刻な病気をもっていて、そのせいもあるらしい。引きこもり気味で変わった妹は、「あの人がああなったのは私のせい」だと言うし。このへんの謎が気になるのよね。
(カモノ・ハシ)