3・11から1年のデータマップ…避難住民9割が家族離散状態

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   死者1万5854人、不明3276人(2012年2月末現在)を出した東日本大震災からまもなく1年になる。この震災で国や自治体、研究機関などは膨大な被災情報を記録した。NHKはこれらから詳細なデータマップを作って突き合わせ、解析をした。その結果、これまで見えなかったものがいくつも浮かび上がってきた。

被災企業4608社いまだ3割が事業停止・実態不明

   津波によって被災した企業は4608社にのぼる。うち3割の1493社が事業停止・実態不明だ。信用調査会社がこれを追跡調査したところ、特定地域に集中していた。最も多いのが石巻の170社 だった。なぜか。漁港地区の水産加工会社の木村長努社長は「作れない。動けない」という。50年来、 特産の「くじらの缶詰」を作ってきたが、漁港周辺は1メートル以上も地盤沈下して、復興交付金でかさあげをする予定だが、まったく動いていない。カベは都市計画の遅れだった。

   実態不明企業の大半がこの地区にある。漁業関連の雇用は5000人。地元が国に要望を出したのは昨年6月だが、第3次補正予算が11月、現地調査が12月、計画策定は1月になった。2月に行われた説明会で「工事は平成26年までかかる」といわれた。「もっと早くできないのか」「見通しのないところではやっていけない」

    建築制限も企業の動き出しを縛っている。南三陸町では5割、女川町では9割、名取市では全企業が制限区域内にある。石巻の商店街も被災250店舗のうち6割が閉めたままだ。この1年で人口が1万人減った。収入がないと生きていけないと、1人また1人と去った。「人がいなくなると、町でなくなる」

   阪神大震災以来、震災復興で提言を続けている経済評論家の内橋克人氏は、「阪神のとき以上の熱気と怒りを感じる。漁業は多層産業だ。水産加工、冷凍、製氷、造船、電気の全部が動かないといけない。必要なのはスピードだ。熱意のある企業ほど急いでいる」という。

   低利 融資や補助金、債権買い取りはあるが、中小には条件が厳しい。実態不明企業の67%が売り上げ1億円未満である。内橋氏は「ひとつの遅れによって、全体が崩壊するのを恐れる。将来のあるべき姿を描いて、深く掘り下げた対策が必要だ」とも語る。

移住先で住民登録―薄れる地元とのつながり

   避難者のデータマップは人の動きを初めてとらえた。岩手、宮城、福島3県で避難者は47万人。うち県内が27万人だが、原発事故で県外避難が多い福島の6万2674人のデータはさまざまな問題を提起していた。

   避難先で一番多いのは山形の1万2973人だ。うち8000人の動きを確かめた。事故直後はまず沿岸部の人たちが避難した。ところが7月になると、内陸部の人たちが大量に動く。山形県が6月に住宅の無料提供を始めたからだ。8割が夫を福島に残した母子の避難だった。放射線による子どもへの影響を心配したからである。

   町ぐるみで避難した双葉町の7000人の1年間の動きは、さらに深刻だ。いま42の都道府県に散らばる。なかでも1か所に500人というのが埼 玉・加須市の高校跡である。住居は教室や体育館、いまも3食とも弁当の生活。職員室は町役場になっている。車イスの渡辺マサさん(92)が「笑顔を写して」と笑った。ここへ来てから介護が必要になってしまった。「人生ははたして幸せだったのかな。悲しいです」という。はじめ1400人がいた。出ていっても「避難所へ行けば顔見知りがいるから」とすぐ近くに住む人が多い。あとから移ってくる人も絶えない。

   関西学院大学の山中茂樹教授は、「避難所ではなく、放射線量の低いところにでも復興住宅を作る方がいい。移住先で住民登録をしてしまうと、地元と切れてしまう」という。3県の避難者は47都道府県にいるが、90%が家族離散状態にある。個人情報のカベで照会もできない人が増えているそうだ。

   山中教授は「『故郷県民カード』みたいなものを作らないといけない。受け入れ側も『在留登録』にしないと、元と先がつながらなくなる」という。政府が動けばすぐにもできることだろう。

    データマップはツイッターなどで発信した記録の解析もやった。亡くなった人たちの追跡からは、生き残る条件までも割り出した。記録はただの数字ではない。一人ひとりの生き様を雄弁に語る。震災を解析する新たな視点をも含んでいるはずである。

   NHKクローズアップ現代(2012年月日放送「震災データマップ 記録が語る新事実」

文   ヤンヤン
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