落としどころ見えない宮城・水産特区-魚は誰のものか

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   宮城県の漁業関係者は、県が打ち出した水産特区構想に猛烈に怒っている。宮城県は屈指の水産県で、海岸線は小さな湾が並び、入江は山の裾まで迫るリアス式海岸が天然の良港となっているからだ。その数はおよそ100か所以上。しかし、多くの漁港が東日本大震災で壊滅的な打撃を受け、今でも漁港が使えなかったりで出漁停止が続いている。そうした中で水産特区構想が打ち出された。

   キャスターの国谷裕子は「漁業関係者は構想に猛烈に反発しています。急激な市場原理導入は日本の漁業を崩壊させると考えているからです。水産特区で日本の漁業は再生できるのかを検証します」と話す。

漁協「企業参入で漁業崩壊する」と猛反発

   宮城県の構想は、すべての港を平等に支援するのではなく、将来性が望める程度に応じて支援に優先順位を付け、これまで漁協が独占してきた漁業権に特区を設けて企業など外部資本の導入を推進するというものだ。全国漁業協同組合連合会(全漁連)などは「特区構想は漁業者の絆を分断し、秩序を崩壊させることにつながるものならば、断じて容認することはできない」と猛反発している。

   国谷「特区構想の背景にあるのは、震災以前から続く漁業の衰退と高齢化です。さらに、これまでの平等主義や漁協任せのあり方が漁業のじり貧を生んだという強い危機感があるようです」

   宮城県石巻市の桃浦漁港では漁師の半数が65歳以上の高齢者だが、ベテラン漁師は「企業の金が入ってくれば、どうしても利益優先となる。そうしたら、これまでの漁業も浜の集落も崩壊する」と危機感を募らせている。

「漁民は魚とってればいい」という時代の終わり

   日本の漁業問題に詳しいゲストの濱田武士(東京海洋大学准教授)はこう話す。 「これまで漁協が漁業権を管理し、日本の漁業のルール作りをしてきた。そのシステムが外部資本の導入によって壊されるかもしれないという危機感がある。そのために特区に対する反発が起きている」

   国谷「特区のメリット、デメリットにはどんなものがありますか」

   濱田准教授「海は場所によって違う。湾一つ変わっただけで、魚種や漁法が違ってくる。漁協はそうした違いの管理・調整をしてきた。さらに、水揚げされた魚の販売管理や取引先との与信管理もやってきた。全部組合任せで、漁師はただ魚を捕ればいいという状態だったが、全部お任せという時代は終わった。

   負の側面としては、企業は利益優先が宿命。そのために、それまでのルールを無視することが多々ある」

   国谷が「日本の漁業再生のためには、何が必要なのでしょうか」と聞く。濱田准教授は「魚の養殖でも、ただエサをやって太らせればいいというものではない。海や川の流れが分からないと養殖業は成り立たない。そうした自然をしっかりと把握しているのが漁業関係者。企業と組んで、しっかりと自分たちのアイデンティティーを主張することが重要」と解説した。

   漁業組合の既得権によって、漁業を目指す若者の参入も難しくなっている。そもそも水産資源は誰のものなのか。漁民のものか国民のものかという議論から始める必要がありそうだ。

文・ナオジン

NHKクローズアップ現代(2012年3月5日放送「日本の漁業は変われるか~宮城・水産特区構想の波紋~」

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