2024年 5月 5日 (日)

東電「緩やかな殺人罪」福島原発現場の陰湿―社員は除染オフィス、作業員は高線量要員

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「熱中症・脱水症」で倒れても医務室行くと「お詫び書類」提出

   「週刊朝日」が福島第一原発の作業員として働いているジャーナリスト桐島瞬のルポ「東電を『殺人容疑』で告発する!」を掲載しているが、そこにはこういうエピソードがある。7月初めにフクイチ免震重要棟の2階に大型冷蔵庫が運び込まれた。この日は就任したばかりの下河辺和彦東電新会長と廣瀬直己新社長が視察に訪れた日だった。冷蔵庫の中にはペットボトルに入った水が大量に冷やされ、東電社員がいつでも飲めるようになっていた。しかし、作業員たちが詰める1階には冷蔵庫もなく、生ぬるい水を飲んでいるのだ。

   たかが水だと思ってはいけない。夏の作業を迎えて作業員たちは放射性物質とは別の「熱中症」や「脱水症」とも闘わなければならないのだ。防護服を着ていることで気温プラス5度。全面マスクでプラス5度。それに放射線防護用のカッパを着たら一気にプラス10度。30分以上の連続作業は無理だ。昨年は23人が熱中症で倒れたが、その何十倍もの作業員が熱中症にかかっただろうと桐島はいう。大事になるのを恐れて医務室に行かない作業員が多いからだ。なぜなら、熱中症患者を1人でも出せば、作業員が所属する企業は東電に丁寧な「お詫び」の書類を作り、対策を講じなければならない。

   さらに、免震棟は放射性物質で汚染されたため管理対象区域として扱われてきた。今年4月、その一部を非管理区域に変更した。徹底的な除染をしたため基準を下回る汚染レベルになったと世間には知らせた。床から1・5メートルの平均線量は1月10日に1・59マイクロシーベルトだったものが、5月22日には0・43マイクロシーベルトまで下がったのだ。

   だが、ここに「さすが東電」といいたくなるようなごまかしがあるという。発表資料には「一部」とある。その一部とは免震棟の2階なのだ。徹底的な除染をしたのは東電社員の専用スペースの2階だけで、「免震棟の1階に1~2時間いるだけで、約0・03ミリ被曝します。1ヵ月に20日間働くと約0・6ミリ、1年で7・2ミリシーベルトも浴びてしまう計算です」(放射線管理員)

   報じられていないが、今年5月に汚染水浄化用のホース交換作業現場で毎時4000ミリシーベルトのベータ線が検出され、知らずに作業をしていた数人が一瞬で5ミリシーベルト以上を浴びるという出来事があった。

   桐島によると、今年5月までフクイチで働いた作業員は2万2000人を超え、この中の一人は678ミリシーベルトという途方もない放射線を浴びた。20ミリシーベルト以上の被曝者は4000人を超え、全体平均の被曝量は11・84ミリシーベルトになるという。こう結んでいる。

「東電に告ぐ。あなたがたがしていることは、緩やかな殺人罪といってもいい。政府は収束作業に当たる作業員に対して、生涯にわたる医療支援体制を早急に作るべきだ」

   その通りである。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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