デジタルに呪われる放送現場―人気女優のナレーション消してしまった!

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   どうもダメというか、相性が悪いというか、恥ずかしいながら、私はスマホをいまいち使いこなせていない。携帯端末はいまや自分の頭脳、そして手足。でも機械のわがままにふりまわされてばかりだ。そんな私の悩みはチッポケだが、このところデジタルに呪われているとしか思えない事故が放送の現場で立て続けに起こっている。

過去の放送から単語抜き出して合成

   久しぶりにナレーションを収めるMAと呼ばれる作業の現場に行った。ナレーションを務めて頂いているのは、誰もが知る人気俳優で、さすがと思わせるうまさだ。通常は途中で言い間違えたり、イントネーションが違っていたりで、そのつど録音し直すのでMAには時間がかかる。NHKから出版されているアクセント辞典をもとに、ディレクター、プロデューサーが気になる言い回しを全てチェックし、何度も録音をし直すからだ。ところが、この日は1時間半ぐらいで作業は終了した。

   安堵して次の現場で別番組の試写に臨んでいたところ、さきほどの番組の若手ディレクターから電話がかかってきた。電話口の彼女の声は震えていた。「すみません…。きょう録ったナレーションの一部のデータが消えちゃいました」

   作業の際、音声データの一部を消してしまったらしい。編集は編集所のオペレーターが作業をしてくれるのだが、今回は完全にオペレーターのミスだという。過去に放送したその番組のナレーションの中から単語を抜き出して合成するので、これまでのナレーション原稿の中から、該当する単語を使っていないか調べて欲しいという依頼だった。結局、消えたデータは復元の専門業者によってなんとか復活して番組は無事に放送された。

お金も時間も掛けた海外ロケ映像が一瞬でパー

   まだまだデジタルに翻弄されることは多い。「デジタイズを業者に頼んだら、ロケ素材のデータが一部消滅しました」と、別のディレクターから連絡が来た。撮影許可に手間取ったシーンで、とても思い入れの強い箇所だっただけに彼は絶望的な気分になったらしい。データは復元できず、構成内容を変更せざるをえないという。なんてこった! 海外ロケには時間もお金もかかる。気持ちよく撮影して、いざ編集という段階でデータが消えてしまったら、ディレクターのこれまでの苦労が全て水の泡である。デジタルに落とし込むだけで、そんなにデータが消滅してしまうものなのか。

   放送現場では、毎日といっていいほどこんなトラブルが起こっている。その度にスタッフの寿命が5年は縮まる。それも、プロである業者に頼んだところのミスが多いらしい。ヒューマンエラーによる場合と単純に編集機材の不具合ということがあるらしいけれど、それにしても多い。専門職のオペレーターたちにとっても、今後を左右する一大事となるトラブルだ。デジタルは便利で美しいけれど、専門業者でもミスが多発する。こわい、こわい。

モジョっこ

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