勘三郎も描いた歌舞伎絵「鳥居派9代目」男社会で唯ひとりの女絵師

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   中村勘三郎の急逝に合わせたわけではなく、以前に取材していたと司会の赤江珠緒がことわって、「Gウーマン」コーナーで女性の歌舞伎絵師・鳥居清光を取り上げた。

   「12月大歌舞伎」を公演中の東京・新橋演舞場正面玄関に飾られた歌舞伎絵をじっと見上げていた女性がひと言、「描き直したいわ」。300年以上も続く鳥居派9代目で、歌舞伎界と同様の男世界の中で唯一女性の歌舞伎絵師だ。歌舞伎絵を描けるのはいまこの人しかいない。

人気役者の大看板描き続けて2000枚

   鳥居清光が8代目の父・清忠の後を継いで30年、74歳になる。急逝した中村勘三郎をはじめ、坂東三津五郎、松本幸四郎など人気役者を描き続けて2000枚に及ぶ。歌舞伎絵の大看板は演目が変わるたびに毎月書き換える。台本が届いてから3週間以内に5~8枚描き、12月大歌舞伎では6枚描き上げた。

努力できる人が天才

   東京郊外のアトリエで、絵の上に腹ばいになったまま描くこと1日20時間。指に力がこもり腱鞘炎で曲がらなくなることもあった。氷水の中に指を入れ、もう片方の手で伸ばすのだが、「これが痛いんです」という。

   まず書道の筆で線描きから始め、これが終わると色付けである。使うのは16色。粉の絵の具をニカワで溶かす。色付けは背景から始め、役者の命である顔は最後まで残しておく。「(顔の色付けは)息を止めて集中するので、撮影はさせませんよ」とピシリ釘を刺された。

父の後を継いで30年74歳…悩みは「後継者になる弟子がいない」

「女には歌舞伎絵を継がせない」

   そんな掟を承知しながら、絵が好きで東京芸大で日本画を学んだ。ところが、後継ぎのはずの兄が映画界入り、後継ぎ問題が浮上した。「私が後を継げなくても、誰かに鳥居派の歌舞伎絵を伝えていかねば…」という危機感から、父親の仕事を手伝うようになった。「あんな武骨の手からこんなきれいな線が描けるなんて、まるで魔法の手のように思いましたね」と父親の絵を絶賛する。

   そんなときに予期せぬ出来事が起きた。父親の死だ。「まだ修行半ばで、一緒に死んだように思った。私の人生は終わったと感じた」と話す。しかし、「このままでは歌舞伎絵も鳥居派も終わってしまう」。そんな思いで父親や祖父の作品を手本に修行を再開したという。それから6年。努力が実って作品が高い評価を受けるようになり、ようやく9代目を継いだ。

   9代目の持論は「天才ではない努力。女性にできないことはない。きちんと仕事をしていれば認められる」だという。コメンテーターの高木美保(女優)は「努力できる人が天才なのでしょう」と感想をもらす。

   ただ、9代目には悩みがある。後継者になる弟子がいないことだ。歌舞伎絵一筋に打ち込んできた情熱はすごい。その情熱で後継者を探し育てて欲しい。ほぼ1時間に及ぶ演目を1枚の大看板に凝縮し、ファンを歌舞伎の世界に誘う。あの大看板も大事な歌舞伎舞台の大道具なのだから…。

文   モンブラン | 似顔絵 池田マコト
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