米国、タイに殺到する「卵子提供」日本人の申し込みでゴールデンウィーク予約いっぱい

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   女性は30代後半になると卵子の老化で妊娠しにくくなる。いま6組に1組の夫婦が不妊に悩むといわれる。しかし、日本では他人の卵子提供が事実上認められていない。そこで、卵子を求めて海外に向かう女性が増えている。統計はないが、その数は半端ではないという。

1回500万円。不妊治療の末の「最後の手段」

   卵子の提供は夫の精子で受精させた胚(受精卵)を妻に移植する。生まれた子の父は夫、母は妻になるが、遺伝学上は妻と子は他人である。法制も学会の指針も整備されているアメリカでは広く行なわれていて、ドナーを紹介する業者も多い。サンフランシスコの業者には日本人スタッフもいて、「日本人の申し込みが200人、ゴールデンウイークは予約でいっぱい」という。移植は1回500万円。申し込みはかつては医師、弁護士など高額所得者が多かったが、いまは普通のサラリーマン、公務員などになった。ほとんどが不妊治療の末の「最後の手段」だ。

   タイのバンコクは費用が米国の4分の1と安いため、訪れる日本人が年間数百人にもなるという。40代の女性は9年間の不妊の治療が実らず、医者から「後は海外」といわれてネットで仲介業者をみつけた。提供女性のプロフィールが あり、同じ血液型の20代前半の女性を選んだ。移植は民間のクリニックで行なう。 診察にはタイ人の通訳がついたが、受精卵の状態など満足な説明が得られないまま移植をした。「残された時間が少ないんです」と女性はいう。

   驚いたことに、日本人のドナーも登録されていた。20代を中心に50人。日本からやってきて約10日間滞在し、排卵誘発剤で1度に数十個の卵子を採取される。報酬ではなく、滞在費用として60万円。日本人スタッフは「金銭目的ではない」というが、営利目的は明らかだ。首都圏に住む20代のドナーは、おととし採取された。「倫理的に抵抗感はあるが、困っている人を助けられたかな」と自分を納得させているという。

拒絶反応・免疫反応で早産の確率1・5倍

   こうした現状を、慶大学医学部産婦人科の吉村泰典教授は「厚生労働省の調査で、2004年から08年までは卵子提供は分娩1万件に1例だったが、09年以降は2.7件になっています。10年 間に2、3倍になった」と見る。

   一方で、高齢になってからの卵子提供のリスクも明らかになってきている。東京・港区の愛育病院で4年前、49歳の女性が妊娠高血圧症候群を発症した。子宮からの出血が止まらず大量の輸血で切り抜けた。あらためて体外受精の出産例を調べた結果、自分の卵子の場合と卵子提供では、早産の確率が29%対46%と1.5倍の差があった。また、卵子提供では癒着胎盤のリスクも高まる。卵子が他人のものなので、拒絶反応・免疫反応があるらしい。愛育病院では以来、卵子提供の妊婦にはきめ細かいケアをしている。

   卵子提供には出産後の課題もある。子どもに事実をどう伝えるかだ。韓国で卵子提供を受け、男の子を授かった夫婦は幸せな日々を送っているが、妻(46)は子の成長につれて不安を抱く。「いずれDNAが簡単にわかるときがくる。子どもが知る前に告知するべきか」と揺れる。

   吉村教授は「高齢になると卵子提供のリスクは高まります。高血圧症は3倍、 糖尿病は8倍。また双子など多胎も多くなります。これらを知ったうえで、医療者、妊婦、 社会全体が立ち向かうべき問題です」という。

   結婚年齢が高くなっているうえに、子どもを育て難い環境が少子高齢化をさらに進めている。「やっぱり子どもがほしい」と思ったときにはもう遅いのか。それでは悲し過ぎるではないか。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2013年1月10日放送「急増 卵子提供」)

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