福知山線事故から8年~遺族たちの無念「JR西日本に責任ないのか」

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   109人が死亡し562人が負傷したJR福知山線の脱線事故から4月25日(2013年)に丸8年を迎えた。しかし、遺族たちはいまだ悲しみが癒えないまま無念な思いでいる。裁判では企業の安全対策の不備が指摘されたにもかかわらず、組織としての企業の刑事責任は問われなかったからだ。このままでは事故の記憶も教訓も風化し、再発防止に繋がらないと感じている。

   イギリスでは相次ぐ大事故の教訓から、事故の責任を企業に問う新たな法律を6年前に施行した。これによって、企業が安全対策に力を入れ事故が激減しているという。日本でも企業や自治体、国といった組織の責任を問う新たな制度導入の時期に来ているのだが、そんな中で起きた福島原発事故で、日本は「誰も責任を取らない国」といったイメージを内外に定着させてしまった。

会社としての安全対策不備を指摘しながら、元社長は無罪

   福知山線の脱線事故は、直接の原因は運転士が制限速度を大きく上回る115キロでカーブに進入し、ブレーキ操作が遅れたことだが、事故調査委員会は事故原因の背景として企業の責任にかかわる3つの問題点を挙げた。1つはATS(自動列車停止装置)の不備。設置されていれば事故は防げたはずだと判定している。2つ目は余裕がなくなっていたダイヤ。3つ目はミスを起こした運転士を通常の業務シフトから外して懲罰的な日勤教育を行っていたことだ。

   神戸地裁で昨年1月(2012年)、JR西日本の山崎正夫元社長に対する判決が出た。JR西日本の安全対策について、組織として期待される水準に達していなかったといわざるを得ないと批判したものの、元社長個人には「事故が起きる危険を認識できなかった」として、無罪を言い渡した。事故の背景に組織要因があったにもかかわらず、問われたのはあくまで個人だけ。事故を招いた他の要因は論点から外され、本質的な問題は置き去りにされたのだ。

   同志社大法学部の川崎友巳教授は「企業や団体といった法人の責任を問えない日本の刑法に限界がある」としながら次ぎのように指摘する。

「企業全体として見合っただけの安全対策を講じていない場合に、組織の構造上の欠陥に対して刑事責任を問うという、今までとは違うアプローチを導入しないと意味がない」

   作家の柳田邦男もこう指摘した。

「刑法は実際にミスをしたり、エラーした個人の責任を問う法律で、組織がいろんな問題を抱えて事故が起こると、誰か一人を血祭りに挙げて処分する。 こういうことでは事故の全体像は見えてきません。ご遺族の感情には責任を追及したいというのはあるんですけど、法制度がかみ合わないので大変な不満が残ってしまう。それを山崎元社長の裁判は示してくれましたね」

   国谷裕子キャスター「個人しか責任を問えないと、全体の責任追及は希薄になってしまうということでしょうか」

   柳田「全体の罪を問うからには証拠を固めなければならない。ところが、証拠調べとなると、個人が直接かかわったところの調査しかない。後はせいぜい背景論的になってしまうんです。
事故というのは単純なものではなく、いろんなものが絡み合って起きます。そこを全部調べ上げて、総体的に安全対策を提言しないと安全防止に結びつきません。個人を特定しても、本質が見えてこないという矛盾があります」

「イギリス」企業・自治体を罰する法改正で大事故激減

   イギリスはこの矛盾を解消するため、経済界から反論が出るなか、10年以上に及ぶ議論の末に企業の責任を問う新たな法律を作った。死亡事故を起こした場合、個人には明らかに法令違反はなくても、企業や自治体のといった組織を罰することができ、安全対策が不備と認められた場合は、上限のない罰金が課せられる。この罰則による抑止効果で、以来、大事故は起きていないという。

   アメリカは刑事罰による処罰重視のイギリス型とは対照的に、事故原因究明を優先した民事による懲罰的な損害賠償で責任を問う方法をとっている。

   では、日本は安全な社会をつくるために、組織の責任を問うにはどういう方法があるのか。日本では事故だけでなく、責任の所在を明確にしない文化的側面をどう捉えていくかも絡んでくる。柳田は「社会文化のあり方が問われるわけで、これは大変なこと。法律家だけでなく、さまざまな人が参加したディスカッションが必要です。その問題提起を福知山線脱線事故の被害者がしていると思います」と、その難しさを指摘した。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2013年4月24日放送「『企業の罪』は問えるのか~JR福知山線脱線事故8年~」)

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