オバマ大統領「シリア軍事介入」で立往生―強行すれば泥沼、止めれば面子丸つぶれ

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   シリア危機が重大局面にある。オバマ大統領は武力介入の方針だが、米議会も世論も賛否が分かれる。5日(2013年9月)から始まったG20でも各国に支持を訴えるが、ロシアがたちはだかる。さらにシリアの反政府勢力の内紛が新たなジレンマを生む。

   化学兵器が使われたのはダマスカス近郊の反政府勢力下の地域だ。地図には12か所の印があった。現在、一帯は政府軍に封鎖されており、外国メディアが立ち入れない。衛星通信で反政府勢力支持の男性が話した。男性は21日未明(2013年8月)、砲撃の音を聞いて現場へ行った。「大きな爆発音はなく、プロペラが回るような音がした」という。現場はパニックだった。目が見えない人、泡を吹いて呼吸ができない人、心肺停止…1400人が死んだと反政府勢力はいう。国連が先8月末に行った調査の結果が出るのは3週間後だ。

   アメリカ政府は独自の調査から、アサド政権によるサリンの使用と断定した。オバマ大統領は「21世紀最悪の化学兵器使用だ。武力攻撃を行うべきだ」と強い決意を示した。これに対して、シリアのゾアビ情報相は「テロリストのでっち上げ」と主張している。シリアの同盟国イランは、化学兵器に不慣れな反政府勢力が事故を起こしたのだとする。12か所もで一斉に事故が起ったとでもいうのか。

アサド政権つぶしたても新たな内戦

   「アラブの春」から始まったシリアの内乱はすでに2年になる。死者11万人、難民は200万人を突破した。オバマ声明はさらに難民を加速させている。トルコ国境のキャンプには毎日数百人がたどり着く。国連は「今世紀最大の人道危機」と呼ぶ。

   高橋和夫・放送大学教授は「化学兵器が使われたのは確かだが、だれが?となると難しい」という。以前の化学兵器使用を国連が調査しているときに、政府側があえてやるだろうか。あるいは、アサド派住民の虐殺にアサド派の一部が暴発したか。

   オバマ大統領のジレンマは大きい。攻撃してもどこまでやるべきか。といって攻撃しなければ、面目丸つぶれになる。アサド政権自体はとりあえず安定していた。つまりイスラエルも安定していた。そのアサド政権をつぶした後はどうなるか。サダム・フセインを潰したあとのイラクがどうなったか。

   反政府勢力は軍を離脱した兵士中心の自由シリア軍と少数のクルド勢力が主だったが、イスラム過激派の伸張が事態を複雑にしている。アジア、アフリカ、ヨーロッパから多数の戦闘員が流入している。フランス語でジハド(聖戦)を語る白人の若者までいた。ヨルダンから密入国を支援している男は「すでに800人を送った」という。

アルカイダ虎視眈眈「シリアに理想国家を建設する」

   戦闘で負傷して戻った23歳のレバノン人は「シリアに厳格なイスラム法にもとづく理想国家を建設する」という。シリアでの聖戦を呼びかけるアルカイダのザワヒリ氏と呼応する。去年までオバマ政権のシリア担当顧問だったフレデリック・ホフ氏は、「アルカイダと関係のある過激派がシリアに根を張り始めたことは深刻だ」という。アメリカは1970年代、アフガニスタンで反政府勢力に武器を供給した。それが回り回ってアルカイダの手でアメリカに向けられた。苦い記憶だ。

   高橋教授は最悪のシナリオをいくつかあげた一方で、対話の芽がないわけでもないという。プーチン大統領は「化学兵器の証拠を見せたら考える」といっている。イランの新大統領はユダヤ教の新年に「新年おめでとう」とツイッターした。各国とも「化学兵器反対」と「シリアでのアルカイダ阻止」では一致している。高橋教授は「これを手がかりに、交渉に踏み出して欲しい」という。が、もし米が攻撃に踏み切ったらその先はもうだれにも読めない。オバマ大統領の決断は重いなんてもんじゃない。

NHKクローズアップ現代(2013年9月5日放送「緊迫シリア『化学兵器疑惑』に迫る」)

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