ミツバチ守れ!EU「夢の農薬」使用規制…大量死で野菜・果実農家打撃

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   EU(欧州連合)はこの5月(2013年)、ネオニコチノイド系農薬の規制を決定した。この農薬は少量でも効果・持続性が高く、コストも安い「夢の農薬」として世界中で使われている。農家への経済的な打撃ははかりしれないのになぜ規制するのか。理由はミツバチだった。

   ミツバチの大量死や突然いなくなったりが世界中で報告されて10年ほどになる。原因はダニ、ウイルス、ストレス、異常気象などさまざまにいわれるがはっきりしない。そんななかで、EUはこの農薬が原因の可能性があるとしたのだ。

ネコチノイドで3割が方向感覚失い帰巣できず死滅

   科学雑誌「サイエンス」に昨年4月、フランスの科学者がミツバチの実証研究を発表した。ミツバチに極小のICチップをつけ、致死量に満たないネオニコチノイドをつけて行動を観察した。その結果、普通のミツバチに比べ2倍近く、最大で3割が方向感覚を失い、巣に帰れずに死ぬというのだった。フランス・ロワール地方の養蜂家は、以前から大量死はブドウ畑の農薬が原因だといっていた。それが証明された形だった。しかし、メーカーは「ほ場では相関関係は認められない。科学的根拠はない」と否定する。それでもEUが規制に踏み切ったのは、「予防原則」の理念だった。

   多くの国が国境を接するEUでは、環境への重大な影響が懸念される場合は、因果関係が十分解明されなくても予防措置をとるのが原則になっている。影響が広がってからでは遅いからだ。オゾン効果や温暖化対策もこれでやった。ただ、今回は12月の実施から2年以内に見直しを行うとしている。この間に因果関係を突き止める。EU委員会は実証不十分は認めながらも、「判断のもとは、いま何をすべきかだった」という。

   ミツバチは野菜、果物の栽培には欠かせない。100種類の農産物の7割以上がミツバチの受粉に依存している。そのミツバチの大量死は農業の死活問題だ。アメリカでもヨーロッパでも続いており、日本でも先月に北海道で起った。養蜂場の地面が数千匹のミツバチの死骸で埋まっていたのだ。

   しかし、ネオニコチノイドもまた農家の強い味方だ。浸透性、持続性が高いから、散布前の種子にコーティングするだけで後の手間は一切要らず、何もしなくても虫を寄せ付けない。日本でもイネの害虫カメムシに最適の農薬である。EUの規制の行方を世界中が注目するのもこのためである。

長崎県「みつばち連絡協議会」稲作農家と果樹農家が連携して農薬自粛

   科学ジャーナリストの小出五郎氏は「これまでの農薬研究は、急性毒性が中心でしたが、ネオニコチノイドはわからないことがいっぱいです。EUは2年をかけて、検証だけでなく代わるべき手段も探そうとしているんです」という。

   日本の農林水産省は今のところ動く気配はない。動いたのは長崎県だ。長崎はイチゴ、メロンのハウス栽培で全国有数の産地である。ハウスでは養蜂家からミ ツバチを借りてきて受粉をする。そのミツバチの大量死に農薬が疑われた以上、ミツバチに関係のない農家も巻き込む必要がある。養蜂家を中心に「みつばち連絡協議会」を立ち上げた。これまで連携のなかった稲作農家と果樹農家が、農薬とミツバチを軸に協力しようという。7月に開いた協議会では、農協が「農薬の自粛」を打ち出すなど協力体制ができつつある。地域の特性に根ざした協力だ。

   小出氏は「信頼関係ができたこと、長崎という地域がやったことの意味は大きい」という。日本の農業は環境も多様で、全国一律の規制は難しい。因果関係の解明は科学の領域だが、農業の現場ではわかってからでは遅い。だからこそ、「地域社会が主役になるべきだ」という。

   長崎の決断はおそらく正しい。地域の共存のために農協までが動いた。「農水省と関係なく」というのも面白い。日本の農業もやるじゃないかと応 援したくなった。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2013年9月12日放送「謎のミツバチ大量死 EU農薬規制の波紋」)

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