「引きこもり10人に1人時代」孤立無業を脱出させろ!必要とされて仕事がしたい

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   内閣府の推計によれば15歳から35歳までの引きこもりは約70万人で出現率は1.79%と推計されている。しかし、自治体の調査などで、実はそれよりずっと多いことがわかってきた。

   白神山地の麓にある人口3800人の秋田県藤里町は全国に先駆けてひきこもりの全戸調査を行った。すると、働く世代のおよそ10人に1人(出現率8.74%)がひきこもり状態という衝撃的な事実が浮かび上がった。内閣府の推計の5倍近くである。

秋田県藤原町が始めたひきこもり向け資格講習会

   藤里町がひきこもり調査するきっかけとなったのは、一人暮らしの高齢者の家を介護ヘルパーが訪れたことからだった。高齢者たちは「あそこの家に1歩も外に出ない人がいる。なぜ出ないのか。できれば助けて上げて欲しい」と次々に言い出したのだ。近所の住民も「あそこにもいる。こっちにもいると話題になった。でも、その家族や本人には申し訳なくて言えなかった」と話す。

   町の社会福祉協議会の菊池まゆみさんをリーダーとするグループが調査に乗り出した。菊地さんは最初はカウンセリングするつもりだったという。「ひきこもりがいても、その数は10人から20人程度だろうと考えていました。ひきこもりの原因は精神疾患があるからというイメージでしたから…」

   調査を始めたものの、引きこもっている本人と話ができない。会うことも困難で、家族からもう来ないでくれと言われたスタッフもいた。会うことができて外出に誘っても、返ってくる答えは「どこへ?」だった。菊地さんたちは改めてひきこもりを受け入れてくれる場所がないことを知らされた。

   当時、菊地さんたちの訪問を受けたAさんは「訪問販売かと思った。怪しい、胡散臭いという思いが先に立った」という。地道な調査で引きこもっている人は113人と判明。「この数字を見たときに、何かで頭をガッツンとされたようなショックを受けました」と菊地さんは言う。

   菊地さんたちは方針転換した。カウンセリングよりイベントを開催すれば家から出てくるのではと考えて、卓球大会やカラオケ大会を開催した。しかし、人はほとんど集まらなかった。そんなときに大きな転機が訪れた。社会福祉協議会の職員募集に、調査活動などで話をしたことがあるひきこもりの女性が応募してきたのだ。さっそく菊地さんは彼女から話を聞いて、求めているのはカウンセリングや悩みを聞いて欲しいということではなく、自分が必要とされる場、仕事がしたいということを知らされた。

   菊地さんは介護士2級の資格が取れる講習会のチラシを作って、ひきこもっている人がいる全戸に配布した。講習会の初日、多くの人が会場に集まり、その中に頑なに面接を拒否していたAさんの姿もあった。

孤立無業162万人。国や自治体に求められる「支援者支援」

   玄田有史教授(東京大学社会科学研究所)はこう話す。「家に閉じこもったままや外に出ることをためらう孤立無業と呼ばれている人たちは、162万人いると推定されています。誤解しないで欲しいのは、今回の藤里町の例は藤里町に限ったことではありません。ていねいに調査をすれば、都市部でも他の地域でも同じような問題を抱えています。

   孤立無業に陥る原因は精神の問題ばかりではありません。現代社会では、誰でも孤立する可能性があります」

   国谷裕子キャスター「ひきこもりを続けている人を社会に送り出すためには、何が必要でしょうか」

   玄田教授「藤里町の例でもわかるとおり、情報提供を粘り強く続けることです。そのためには、ひきこもりを支援しようとしている人たちに対する国や自治体の支援者支援という仕組みが大切です。ひきこもりは地域のお荷物ではなく宝、次代を担う大きな力だと発想の転換をすべきです」

   藤里町のひきこもっていた113人のうち50人以上が家を出て、そのうち36人が働き始めているという。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2013年10月28日放送「ひきこもりを地域の力に~秋田・藤里町の挑戦~」)

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