2024年 5月 5日 (日)

暴れる認知症患者が接し方ひとつで穏やかに…画期的!「ユマニチュード」どんなケア?

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   医療現場では、認知症患者が夜中に徘徊したり暴力をふるったりで、看護スタッフが四苦八苦することが少なくない。ところが、あるケアを受けたところ、すっかり穏やかで素直になり、元気を取り戻すようになった。フランスのジネスト・マレスコッティ研究所が開発した「ユマニチュード」で、イブ・ジネスト所長は「ユマニチュードの技術があれば、認知症高齢者とのコミュニケーションを改善でき、本人の望まない強制的ケアをなくすことができます」と話す。ランスでは35年前から研究が進められ、今ではドイツ、カナダなどにも広まっている。日本でも導入する動きが広がり始めている。

基本は「見る」「話す」「触れる」「立つ」

   超高齢者社会を迎えた日本で認知症患者は、症状のある人や予備軍を含めると800万人以上いるといわれている。記憶機能や判断力の低下が中核症状だが、医療現場では患者が点滴の針を抜いたり転倒するケースが少なくない。それを防ぐために、一時的に体をベルトで拘束したり、手足の自由を抑制せざるを得ないケースが増加している。しかし、患者は不安やストレスからますます暴力的になり、症状が進むという悪循環に陥っているという。

   今年1月(2014年)、全日本病院協会は「認知症研修会」を開き、ユマニチュードの講習も行った。講師として参加したジネスト所長が提案したのは4つの基本要素だった。「見る」「話す」「触れる」「立つ」だ。

   たとえば「見る」では、ベッドの脇から見下ろすと患者に支配されているという感情を引き起こしてしまう。認知症では視野が狭くなるため、患者が視野の中心で捉えるように、正面から近づき、しゃがんで患者を見つめるのが良い。

   「話す」では「体を拭きます」とひと言声をかけたあと黙ったままケアをすると、患者は自分の存在が無視されているように感じてしまう。相手が心地よく感じる言葉を穏やかな声で話しかけ、説明しながらケアを行なうと安心してケアを受け入れてくれる。

   「触れる」では、腕などをつかむ行為は相手に恐怖心を感じさせ、自分で動こうとする気持ちを妨げる。つかむのではなく、本人が動こうとする意思を生かすように下から支えることが肝心だという。

   東京・調布市の救急病院に昨年12月(2013年)に感染症で入院した87歳の男性は、生活環境の変化で一気に認知症が進んでしまった。昼と夜の行動が逆転し、多いときは10回以上ナースコールを押して「眠れない」と訴える。昼は意識が朦朧としほとんど寝たきりだが、時として声を荒げることもある。妻が毎日見舞いに来ているが、意思の疎通が難しくなった。

   病院からの依頼でジネスト所長が男性の病室を訪れ、ユマニチュードを活用したケアを始めた。すると呼びかけに素直に応じ、ジネスト所長が「健康になりたいですか。元気になりたいですか」と尋ねると、「イエス」と答える。攻撃的な言動はなくなり、帰りかけたジネスト所長に手をあげて挨拶した。妻は「びっくりしました。私のほうが元気をもらったかもしれませんね」と話す。看護婦も「患者さんにとっていいケア方法であるのはもちろんですが、看護師にとっても喜びとか楽しみが見つけられるケア方法かなと思いましたね、奥さんの笑顔を見て感じました」という。

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