四国遍路を歩く若者たち…「自分を肯定して、自分が何者なのかを知りたい」

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   1200年前、弘法大師・空海が開創して以来、脈々と受け継がれてきた四国遍路は、信仰や死者の供養、病気の治癒祈願が主な目的だったが、近年、若者たちの姿が目立つ。若者たちを引きつけるのはなんなのか。「クローズアップ現代」は2人の若者に密着して歩いた。

「一期一会の連続。人との触れ合いとか関わりというのはすごく大切ですね」

   大学を卒業して金融関係の会社に入社した長谷川佑貴さん(26)は、「対人関係が苦手で、日常に息苦しさを感じていました。話し掛けないでくれという毎日でした」と話す。

   5月の大型連休を利用して大阪から四国遍路に向かった。白装束に着替え気持ちを切り替えて、2泊3日の区切り打ちだ。区切り打ちは八十八札所をいくつかに区切って何回かかけて回る歩き方だ。徳島の険しい山道で一息ついた時に、同じお遍路さんと出会った。そのとき自分の中に小さな変化が起きているのを感じた。

   長谷川さんは「これまで自分の中には他の人と繋がるのに壁がありました。その壁がこのお遍路を通してどんどん崩れていっています。一期一会の連続、人との触れ合いとか関わりというのはすごく大切ですね」と話す。

   高知の海沿いで出会った赤木亮太君(18)は岡山の高校を卒業後、四国遍路で1400キロを歩こうと考えた理由をこう話す。「思春期のころから、自分にはいいところがないと思いがちで、受験の面接でもうまく話せませんでした。遍路の旅に出れば、自分が変われるのではと思いました」

   赤城君が歩いていた高知の遍路道は、四国4県の中でも最も長い海岸沿いの380キロだ。?次の札所まで3日かかる場所もある過酷な道で、?いくら歩いても海ばかりである。ここで脱落するお遍路さんも少なくないという難所で、その次の愛媛県は一転険しい山々が連なる山道となる。

   高知では足を気にしながら歩いていた赤木君だが、愛媛では休憩せずに歩き続けて「険しい道にも慣れてきて、余裕ができて、いろいろ考えられるようにはなりました。帰ってから、どうやってこれから1年を過ごそうかなとか。まだ答えは出てないけど、少しずつ考え始めました」と語り始めた。

大日寺住職「体を酷使してお遍路を歩く体ができたときに余裕ができます」

   国谷裕子キャスターは第四番札所である大日寺の境内にいた。遍路の移り変わりを40年以上見守ってきた真鍋俊照・住職に、「赤木さんは巡礼の道を歩き終えて、自分の良いところは見つからなかったが、頑張っているいまの自分のままでいいのだということを語っていましたが、どのようにお聞きになりましたか」と聞く。

「いまの若い人で、結論めいたことをはっきり言えるというのは凄いと思いました。自分を肯定して、そして高めていくという意欲が遍路をやってありありとうかがえます」

   国谷「遍路の道を歩いたあとに、自分のことをありのまま受け入れられるというのはなぜなのでしょう」

   真鍋住職「お遍路さんは最初から自分の心を見つめるとかではなくて、必死で歩いて限界を感じます。体を酷使して、その中でだんだん自分の体ができ上がる。自分の体と向き合って、お遍路を歩く体ができたときに余裕ができます。そして、自分のことを考えられるようになるんです」

   国谷「長谷川さんは人と関わることに疲れを覚えていたが、巡礼の道を歩いたあと、他人と関わることが大事だと思えるようになったと語っています」

   四国遍路の研究を続けている作新学院大学の福島明子・教授はこう説明する。「私の調査からも、お遍路でつながりの回復がなされるのではないかと感じます。まずは自分の体と向き合って体と心がつながるという経験があり、それから地元の方のお接待(支援)を受ける中で、地元の方とお遍路さんのつながりを感じるようになります。そして、お遍路さんどうしのつながりや自然豊かな地に足をつけて歩いて山や川や海、自然とのつながりというものも感じられます。

   いまの社会は成果主義や合理主義ですので、何かができたからすばらしいとか、何かができないからもう少し頑張ってなど条件の世界です。でも、お遍路では無条件に受け入れられてつながりを回復していけると、現代社会で失われているものに気づくのではないでしょうか」

ナオジン

*NHKクローズアップ現代(2014年6月23日放送「四国遍路1400キロ 増える若者たち」)

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