2024年 4月 25日 (木)

中国ドラッグ新たなターゲット「薬物防止策手薄の日本」毒性強めて荒稼ぎ

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   脱法ハーブから「危険ドラッグ」。警察も言い方をかえ警鐘を打ち鳴らしているが、手を替え品を替え毒性を強め出回っている実態に歯止めはかかるのか。薬物中毒の治療現場では新たな危険ドラッグによって命を奪われる患者も出現しており、医師は「得体の知れない毒を自ら体内に入れて危険な人体実験をしているのと同じだ」と危惧する。

   厚労省の研究班の調査では、危険ドラッグ経験者は推定で40万人と見られている。国は1300種以上を指定薬物とし規制を強化しているが、その網をかいくぐって作られる新たなドラッグは、命を奪いかねない毒性の強いものになっている。

科学知識持った専門家が「新ドラッグ」開発

   全国で危険ドラッグが原因とみられる車の事故が相次ぎ、7月(2014年)までに11件、37人が事故の巻き添えになり死傷した。なぜ急に増えたのか。警察では今年に入ってより強い成分が含まれる危険ドラッグが出回るようになったことが原因とみている。

   6月24日、東京・池袋駅西口の繁華街で危険ドラッグを吸引した直後に車を暴走させて8人が死傷した事件では、男が所持していたのは出回り始めたばかりのドラッグだった。分析の結果、検出されたのは合成カンナビノイドといわれる化学物質の一種だった。国は昨年2月、同じ基本構造を持つドラッグを一斉に指定薬物にしたが、池袋で使われたドラッグは基本構造の一部が異なっていたため、規制の対象とはならなかった。

   国立精神・神経医療研究センター依存性薬物研究室の船田正彦室長はこう指摘する。「おそらくわが国における薬物の規制状況を把握した上で、規制をかいくぐる新たなドラッグを次々と作り流通させているのでしょう。化学知識を持った人物が関わっている可能性が極めて高いですね」

   怖いのは規制をかいくぐった毒性の強いドラッグを知らずに使い、命を落とすケースが出てきたことだ。長年、薬物依存症の治療医あたってきた埼玉県立精神医療センターの成瀬鴨也副院長は、「規制の網を潜り抜けるたびに、アメーバ―のように非常に強力で危険な物に変貌している」という。

   その例として、危険ドラッグ使っていた30代男性の血液検査を行ったところ、筋肉の細胞が壊れるときに出る酵素の量を示す数値が32万8200という異常値を示した。正常値は高くて200程度だ。横紋筋融解症と呼ばれる症状で、強い薬物を摂取すると全身の筋肉に負担がかかって細胞が破壊され、放っておくと腎不全などで死に至る。実際、昨年8月には危険ドラッグを使い続けていた30代の男性が死亡している。成瀬副院長は「これまで人間が使ったこともない、動物実験もされていないような物質がいま入ってきているんです。得体の知れない毒を体内に入れているのが実態で、軽い気持ちで手を出すものでは絶対にない」と強調している。

都内の密造工場「中国業者から100キロ単位で仕入れ2年で20億円」

   この化学物質の供給源は中国だ。日本だけでなくアメリカへも流入しているという。警視庁が昨年11月、都内にあった危険ドラッグの密造工場を摘発した。密造には約20人が関わっていて、化学物質を溶かした液体を乾燥させた植物の葉に霧吹きを使って吹き付けドラッグを製造していた。使われていた原料の化学物質は中国の業者から100キロ単位でまとめて仕入れ、2年間で20億円を荒稼ぎしていたという。

   国谷裕子キャスター「危険ドラッグはいまや人体実験が行われているような状況なのですね」

「まったくその通りだと思います」

   国立精神・神経医療センターの和田清・薬物依存研究部長が解説する。

「危険ドラッグは何が起こっても、どんな症状が出ても不思議でないのが特徴です。先の横紋筋融解症は腎臓のろ過機能をダメにし、透析しないと死んでしまう。精神的にもものすごい興奮状態、妄想状態になり、他人の家に入り込んで大騒ぎして強制入院になるケースもありました」

   国谷「日本は諸外国に比べ薬物依存者が極めて少ない国とされてきましたが、危険ドラッグに歯止めをかけるにはどうすればいいんでしょうか」

   和田部長「1回でも薬物をやったことがある生涯経験率は、アメリカ47.1%、オーストラリア38.1%、イギリス36.8%とすごい数字ですが、日本は2.9%で先進国のなかでは奇跡といわれてきました。ただ、困ったことに、この数字のせいでドラッグの危険性に対する実感がない。鈍い。危険ドラッグに携わる人、専門家は、私の知る限りアメリカ数百人に対し日本は10人程度。アメリカに比べ、恥ずかしい限りです。それにもう一つ重要なのは乱用防止策。これも先進国で最も遅れています」

   得体の知れない化学物質を売る中国の悪徳業者が、いまターゲットにしているのはアメリカよりも日本市場で、理由は高く買ってくれるからだという。つまり、規制が後手で、好奇心から気軽にドラッグをやり依存症になってしまう愚か者が多いということだ。

「ここで有効な手を打たなければ、将来、日本は薬物乱用大国になる恐れすらあります」

   語気を強め語った厚労省の麻薬取締部長の言葉が強く耳に残った。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2014年7月30日放送「命を奪う危険ドラッグ」)

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