媚びずに気を使え!ベテラン女優さんが教えてくれたテレビ業界の生き残り術
売れなくて苦労した。長い下積み時代、食うにも食えず切りつめたギリギリの生活をして、ようやく日の目をみるようになった。そんな女優さんは多い。舞台でずっと活躍して来て、テレビドラマのわき役で注目を浴び、タレント活動までするようになった役者さんなどと話をしていると、面白いエピソードがポンポン飛び出す。
「照明部に嫌われたら、いいライト当ててくれないのよ」
今となっては笑い話になっている苦労時代と、若手へのアドバイスが入り混じった話からひとつ。あるベテラン女優さんがアドバイスしてくれた一言。
「媚びちゃダメよ。でも気は使って使いまくりなさい」
女優にはワガママで好き放題やっているイメージがあるが、現実は違うようだ。まずはプロデューサーに気にいってもらうこと。ディレクターや監督に可愛がってもらうこと。そうでないと編集で彼らからしっぺ返しを食らうことになる。せっかくいい芝居をしても、カットされたり声だけが使われて画面登場時間や回数が減ってしまう。照明さんにも気を使うこと。女優はライトが命。老けてみえるのもハツラツと若々しくみえるのも照明部にいいライトを当ててもらうことが肝だ。
でも、ここで重要なのはどのスタッフに対しても媚びてはいけない。媚びたら安い女優だとバカにされるし、相手によっては心が離れてしまう。へたすりゃ枕営業になりかねない。媚びずに気を使う。この違いを間違えると、女優生命にも影響しかねないんだそうだ。
そのために必要なのは笑顔。いつも笑顔で飲み会に誘われれば適度に参加し、最後まではいない。そうすれば気さくにスタッフに接し、気のきく人づきあいのいい女優さんというイメージになって、プラス査定となるらしい。
気を付けなきゃいけないこんなプロヂューサー
この話、テレビ業界にも当てはまる。放送作家や外部のディレクターなどは声をかけられてなんぼの商売だ。局や制作会社のプロデューサーに声をかけてもらわなければ仕事が始まらない。「だれかいい作家いない?」とプロデューサー、ディレクター同士で作家を紹介しあっているときに、自分の名前があがったらラッキーということである。
その逆もしかり、あの嫌いなプロデューサーが可愛がっていた作家だから使いたくないという場合もある。いくらその作家が仕事のできる人だったとしても、好き嫌いで仕事が入ったり入らなかったりする。使われる方も八方美人ではまた嫌われる。媚びずに気を使い、仕事が来るのを待つ。
しかし、飲み会を途中で抜けるのはなかなか難しい。自分の体調と仕事のバランスと相談しつつ、行けるときは行く。飲みばかりで仕事につながらないなんてプロデューサーもいるし、飲み代をいつもこちらが負担しなくてはいけないなんてプロデューサーだっている。これには気をつけろと先輩作家が愚痴っていたのを思い出す。
いずれにしても、女優しかりディレクターしかり作家しかり、好きでもないのにこの仕事をしている人はいない。好きを商売にしたからこそ感じるストレスというか宿命なのかもしれない。
モジョっこ