いつもの街も違って見える!活用広がる「3D地図」数センチの精度で地形読み取り

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   3D(立体)地図をご存知か。たとえば渋谷。谷という名の通り、渋谷駅は谷の底にある。道玄坂は流れを遡る。NHKは高台の上――平面地図では見えない地形が浮かび上がる。これが宝の山なのだという。ただ、宝を見つけ出すには読解力がいる。「地図力」というのだそうだ。

   3D地図は航空レーザー測量で可能になった。レーザーの照射は樹木を突き抜け、数センチの精度で地表の形を読みとる。国土地理院はすでに日本の国土の50%近くの3D地図をネットで公開しているのだが、まだ知る人は少ない。

人工林日本一の佐賀県 樹木の1本1本把握して森林保全

   山梨県北杜市の大手飲料メーカーは年間5000万ケースのミネラルウォーターを生産している。原料は南アルプスの地下水だ。雨水は地下にしみ込んでミネラルを含む。山が荒れて地表を流れた水は原料にはならない。水質基準を満たす水を安定的に確保するには、水源である森林の整備が欠かせない。だが、広大な森林の現状把握は容易ではない。

   3年前から3D地図を活用して初めて詳細な地形がわかった。谷の一つひとつ はもちろん、尾根の上にも谷があったりする。崩壊など異変があっても、素早い対応が可能になった。「水がしみやすい健全な山を維持できる」という。

   人手が限られる林業の現場でも3Dは生きる。人工林の割合が日本一の佐賀県では、4年前に県全域の3D地図を作った。地形の凹凸だけでなく、特殊な解析を加えるとスギやヒノキがどこに何本あるかまで正確に把握できる。どこで間伐が必 要かも一目瞭然で、森林整備が順調に進んでいるという。

防災、新ビジネス、農作物の適否・・・どう使うかは「地図力」次第

   3D地図の利用でアメリカは世界をリードする。データはオープンで誰でも自由に利用できるのだが、NASA(航空宇宙局)は昨年9月(2014年)、地球全体の3D地図づくりを発表した。18年に国際宇宙ステーションに特殊なレーザー測定器を設置して、測定結果を世界に公開するという遠大なプロジェクトだ。NASAは「人類にとって画期的なこと」という。それはそうだろう。

   新たなビジネスを立ち上げたITベンチャーがある。目をつけたのは州政府が公開していた都市の3D地図だ。家屋も入っているので、屋根の傾きと日照時間からソーラーパネルの発電効率を割り出した。初期費用と発電量から「この建物は何年で元がとれる」と一瞬ではじき出すのだ。

   いま全米7都市で事業を展開しているが、2年後には設立時の35倍、約17億円の売り上げを見込んでいるという。経営者は「街全体の発電量も計算できる。ボストンだと2.2ギガワット。原子力発電所と同じ」という。

   「地図力」の育成もある。アーカンソー州の公立小学校では2年前から全学年で3D地図を授業に使っている。閲覧ソフトは大手ソフト会社が無償で提供した。子どもたちは「1度覚えれば簡単」と、パソコン画面で地図を呼び出しては、何に役立つかをけんめいに考えている。

   この面で日本はまだまだ。高校でも必修は世界史で、日本史と地理は選択科目だ。生徒の半数は地理を知らずに卒業していく。日本学術会議が昨年やっとオープンデータの活用で「地図力」を高める必要を提言したところである。

   東大空間情報科学研究センター長の小口高氏は「災害に活用できます。地震の活断層が森林の下でもわかるし、津波対策にも土砂災害の予測にもなるんです」という。農業では作物の適否、道路の傾斜とエネルギー消費とか活用はまさに「地図力」次第だという。

NHKクローズアップ現代(2015年2月6日放送「『地図力』が社会を変える!」)

文   ヤンヤン
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