3Dプリンター日本人の開発だった!見向きもされなかった「埋没技術」米国メーカーが実用化

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   先月(2015年2月)名古屋で開かれた講演会のメインはノーベル賞受賞者の天野浩・名古屋大教授だったが、もう1人注目された人がいた。話題の3Dプリンターの発案者、小玉秀男さん(65)である。日本人の発想だったなんて知ってました? 小玉さんはここで同じミスを繰り返さないように」と訴えていた。

   名古屋の工業研究所の技術者だった35年前、印刷技術と光を当てると固まる技術の組み合わせで3Dプリンターの基礎技術を誕生させた。1980年に特許を出 願し海外に論文も書いた。学会で発表し展示会で作品を見せたが、「使い道が考えられない」と周囲の目は冷たかった。小玉さんは4年後、特許もあきらめ研究所を退職した。

   その後、アメリカのメーカーが莫大な資金を投じて小玉さんの技術を実用化した。2020年の市場規模は1兆円といわれる。いま弁理士をしている小玉さんは、「技術を理解する感性をもった人に当たらないとダメ」という。

羽根のない扇風機、電子書籍端末、喘息の吸入剤・・・「死の谷」から蘇って画期的製品

   技術力こそは日本の競争力の源だが、開発されても事業化されずに埋没している技術は多い。資金がなかったり企業が先を読めなかったりと理由はさまざまだが、技術者はこれを「死の谷」と呼ぶのだそうだ。

   3Dプリンターのように外国勢の手で蘇っている新技術がいくつもある。羽根のない扇風機、電子書籍端末、喘息の吸入剤・・・いまようやく埋没技術に目が向けられ始めている。

   富士通の神奈川・川崎市の倉庫にはそうしたサンプルが山積みだ。取得特許は10万件になる。権利維持だけで年間数十億円かかるが、半分近くが使われていない。そんななかにキーボード用の素材チタンアパタイトがあった。光を当てると殺菌、ウイルスを分解する。だが、15年間眠っていた。

   開発担当者は「企業としては100億円以上を目指す。事業規模、富士通の方向性と合わなかった」という。今年、技術の活用をねらって社内公開すると、予期せぬ反応があった。同じ川崎の中小企業からの引き合いだった。銀行のATMなどのタッチパネルシートにチタンアパタイトを使いたいというのだ。抗菌需要である。富士通はこの企業に技術を提供しライセンス料をとることになった。

   企業内で眠っていた技術のよみがえったケースもある。パナソニックは最先端技術の自立支援型介護ロボットを作っている。高齢者の筋力をアシストする技術は、2000年代に大型プラズマテレビの工場で使われていたロボットアームの技術だ。

   テレビは海外勢に押されて撤退し工場閉鎖でアームも埋没していたのを、社内横断的なプロジェクトが発掘した。部門別に動くことが多い大企業では「こうしたことがいっぱいある」と担当者はいう。介護ロボットは5年後の市場規模500億円といわれている。

千葉銀行が始めた「知的財産」担保に中小企業融資

   中小企業と金融のコラボもある。千葉銀行は今年度から新たな融資制度を始めた。技術力の証である知的財産を担保とみなそうという考え方で、これで夢が開けた企業があった。三立機械工業という社員17人のリサイクル会社だ。家庭やオフィスから回収した電気のケーブル類をまとめて処理して、銅だけを分別する技術で特許を持っている。中根昭会長はアジア各国で新たな市場を作りたかったが、国ごとの特許料や市場調査費がかさむため中小企業の手に余る。銀行 の新制度がこれに手を差し伸べ、無担保融資が決まった。

   東大教授で日本知財学会会長の渡部俊也氏は「3Dプリンターは安く高品質のものをつくるという時代に合わなかったんですが、アメリカは逆にユーザーが作るという発想の転換があったわけです」という。アメリカでは事業化が難しいとみると、ベンチャーにやらせて成功すると買いとるなど、技術に対する風土の違いもあると話す。

   せっかく開発した技術を事業規模の論理で平気で眠らせるなんてのは日本の大企業くらいのものだろう。一方で、中小企業の技術力は高いし発想も柔らかい。「下町ロケット」じゃないが、中小企業が風穴を開けてくれたら面白い。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2015年3月2日放送「『埋没技術』を活用せよ~市場創出への挑戦~」)

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