渡辺謙「トニー賞」逃したが客を呼べる俳優と高い評価!新しい「王様と私」に挑戦

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   渡辺謙が主演したミュージカル「王様と私」は演劇界最高の栄誉とされるトニー賞4部門で受賞し、渡辺は主演男優賞は逃したが、そもそもノミネートされたことが話題だった。渡辺が「ラストサムライ」で活動の場をアメリカに移したのは03年で、以後、映画「バットマン ビギンズ」「硫黄島からの手紙」「GODZILLA」などでハリウッドを賑わしてきたから、今さら「トニー賞ノミネート」と聞いてもピンと来ないムキも多かったろう。

   しかし、ショービジネスのプロたちから見れば、渡辺のノミネートはとてつもない挑戦だったという。何よりハリウッドの「映画」からブロードウェイの「ミュージカル」に進出したことが大きい。

   エンターテインメントビジネスが専門の城西国際大の掛尾良夫教授はこう解説する。「渡辺さんはハリウッドですでにトップスターの一員で、この芝居に出なくても傷つくことない人です。さらに演じた『王様と私』というのは60年前からの古典だった。これに出るというのは、新しい渡辺謙の『王様と私』を築き上げなければならないということなんです。2つの意味で厳しい挑戦だったと思います」

ニューヨークタイムズ酷評!「英語が聞き取れない」

   実は、数年前からブロードウェイの舞台にハリウッドの有名俳優がキャステイングされる例が相次いでいた。観客の7割は世界各国から訪れる観光客で、彼らを呼び込むために知名度の高い俳優の起用が欠かせなくなったのだ。ミュージカルのベテラン演出家・ロニー・プライスは「誰もが有名スターを求めています。知名度があり、客を呼べることが大事なのです。無名でも素晴らしい俳優はいますがチケットは売れません。だからプロデューサーは有名スターを選ぶのです」と話す。

   初めて挑んだ舞台は渡辺にとって想像を超える厳しいものだった。100ページに及ぶ英語の台本を覚え観客に届くように表現しなければいけない。さらに厄介なのが歌だ。独特の『韻』を踏んで表現する歌唱法は英語圏の役者ですら難しいと言われている。

   国谷裕子キャスター「やり直しのきかない英語での生の演技ですよね。しかも渡辺さんにとって歌やダンスを披露するミュージカルは初めてです。当初、『英語が聞き取れない』など厳しい批評がニューヨークタイムズなどに掲載されました」

   それでもミュージカルに挑戦した理由を渡辺はこう語る。「簡単に言っちゃうと、やったことがないことをやっているだけですよ。演技者として何ができるかということをトライしたかったんです」

「『うわぁ、これ本当に何もできないや』と55歳にして思った」

   しかし、渡辺のように挑戦し続ける日本役者は少ない。掛尾教授は「日本の国内市場がある程度大きくて、(海外に出なくても)十分やっていけてしまうからです。香港、台湾、韓国は自国の市場が小さいので、強く外に出なければならなくなっています。ショービジネスがグローバル化していくなか、(日本の俳優にとっても)絶好のチャンスなんですけどねぇ」と話す。

   渡辺を最初にハリウッドに紹介したキャスティング・ディレクターの奈良橋陽子さんも「(ブロードウェイには)日本人がいるという印象がなんとなく薄いんですよね。もっと冒険して、もっと挑戦して欲しいです」という。そうした中での「トニー賞ノミネート」だったことで、渡辺の挑戦は評価された。

   渡辺は語る。「とりあえず来てみたらと思うんです。やみくもにでも。僕だって『うわぁ、これ本当に何もできないや』と55歳にして思ったからね。そういう自分の中で突きつけられるような環境を求めていかないと得られるものはないよね。そういうことをもっとトライして欲しいと思いますね」

*NHKクローズアップ現代(2015年6月8日放送「未知の世界へ飛び出せ~渡辺謙・55歳の挑戦~」)

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