2024年 5月 5日 (日)

新国立競技場「2520億円のバラック」コストより奇抜さで決めた安藤忠雄以下審査委員会の「あとは野となれ山となれ」

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   新国立競技場の建設計画が7日(2015年7月)、国民の納得が得られないまま当初想定された予算の2倍近い2520億円で事実上承認された。開催費の削減を目指すIOC(国際オリンピック委員会)に逆行し、北京五輪やロンドン五輪のメインスタジアムの5倍の建設費である。あげくに東京都に費用の一部負担を求める迷走ぶりだ。

   デザインの決定に関わった複数の建築家を「クローズアップ現代」が取材したところ、インパクトのあるデザインに主眼が置かれ、「コストのことは何とかなる」というバブル期そのままの発想で決まったらしい。デザイン決定の舞台裏で何があったのか。

   デザインの国際コンペで想定した費用は1300億円だったが、その後、設計会社から3000億円という試算が出されたため、規模を縮小して1625億円に削減した。しかし、施工を担当するゼネコンが試算したところ、縮小しても3000億円を超える見積もりになった。このため、開閉式屋根の設置を五輪後に先延ばしして2520億円ことになった。

施工主の日本スポーツ振興センターも文科相もまるで他人事

   オリンピック開催地として立候補したのは東日本大震災のあった2011年の11月だ。翌12月に国家プロジェクトとして新国立競技場の建設が進められることになり、12年7月にデザインの募集を始め、46点(国内12点、海外34点)の応募があった。

   デザインを決めたのは8人の審査委員会だ。一次審査で11点(国内4点、海外7点)に絞り込まれ、二次審査でイラク人女性建築家の作品が最優秀賞として選ばれた。審査委員会のメンバーは審査委員長の安藤忠雄、鈴木博之(昨年2月死去)、内藤廣、音響に詳しい安岡正人の4人は建築家、岸井隆之は都市計画の専門家、小倉純二・前日本サッカー協会会長、作曲家の都倉俊一で、残る2人は英国人建築家だった。

   審査にあたってはサッカーや陸上に加え、コンサートホールも開催できる多目的スタジアムが条件だった。二次審査では安藤委員長が主張する「未来を示すインパクトのあるデザインで、日本の建築技術でしか造り得ない技術的チャレンジができるもの」に絞られた。2人の委員からは懸念の声が上がった。「本当にこの通り軽やかに建設できるのか危惧を持っている」(岸井委員)、「多分、そうとう大変で不可能に近いし、かなりのコストがかかるという懸念がある」(内藤委員)

   しかし、安藤委員長の「日本の技術力とチャレンジ精神から17番(イラク人女性建築家の作品)が良い」の一言に引っ張られ決まったようだ。安岡委員は「審査委員にコストについてそれほど情報提供がなかったし、まあ何とかなるだろう程度の気持ちだった」と述懐する。唯一コストに懸念を示した内藤委員は「ものすごく急いでいた。時間がない、時間がないって。これだけの施設のデザインを建築費用を含め決めるには、最低でも倍以上の期間が必要だった」と指摘している。

   これについて、施工主のJSC(日本スポーツ振興センター)の河野理事長は「独立行政法人は国の指導や枠の中で動いていますか」とまるで他人事だ。JSCを所管する下村博文文部科学相も「JSCだけで対応できないので何とか応援してくれという話が来たのは今年(2015年)4月だった。スキームの問題があって、半年前からわかっていれば適切な対応ができたことがあったかもしれないけど、今日に至った」と、あれだけマスコミが問題視していたのに放っておいたということだ。

2020年東京オリンピックは早くも失敗か

   国谷裕子キャスターもこんな憤懣を漏らした。「JSC理事長からは『国の指導で動いている』、所管する文科省の大臣は『半年ほど前に分かっていれば適切な対応が取れた』と何か責任を押し付け合っているような言葉に納得いかない人が多いと思います」

   これに、東京大生産技術研究所の野城智也教授が次のように語った。「大規模で複雑なプロジェクトなので、キャプテン、監督がいないことには立ち向えません。全体を目配りをしながら、多少矛盾があってもまとめていく当事者意識と権限を与えていかないと全体がうまく走っていかない」

   国谷「もっとシンプルに設計をし直せばという声も多いのですが」

   野城教授「3年3か月たった時間をもう一度繰り返すことができるかというと、縮めても2年ぐらいが精いっぱい。残されたのは今の計画を進めていく以外にオリンピックのホストの道はないと思います」

   いまの時点で、東京オリンピックはすでに失敗しているんじゃないか。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2015年7月8日放送「『迷走』新国立競技場」)

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