昔話法廷(NHK Eテレ)
オオカミ殺した「三匹のこぶた」正当防衛か?計画殺人か?面白くてためになる中高生向け法廷ドラマ

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   朝10時、何の気なしにつけたテレビの画面に釘付けになった。弁護人、検察官、裁判官が出てくるよくある法廷のシーンなのだが、被告人がなぜか豚なのだ。被告人はトン三郎といい、傍聴席にはトン一郎、トン二郎という兄弟も座っている。

   観ていると、「三匹のこぶた」でレンガの家を建て、兄弟をオオカミから救った3番目の豚がオオカミ殺害容疑で逮捕され、殺人(殺オオカミ?)の罪で裁判員裁判にかけられている、という法廷ドラマだとわかった。おなじみの昔話の主人公が訴えられるという「昔話法廷」だ。面白い予感がしないわけないではないか。

ばかばかしいことを大真面目にやるおかしさ

   たった15分間で、どうやら中学・高校生向けの特別ドラマのようだが、大人が見ても十分に楽しめる。誰もが知っている昔話の主人公が法廷で罪に問われるという発想もさりながら、絵面はなんともシュールなのに特に笑わせどころもなく、淡々と昔話に沿って裁判を行うという仕立てが素晴らしい。

   ワラの家、木の家をオオカミに破壊され、命からがらレンガの家に逃げ込み、煙突から侵入するオオカミを撃退した子豚たちだが、証人であるオオカミの母親の証言により、その日、オオカミはトン三郎から誘われて出かけて行ったことが発覚する。オオカミ殺害は正当防衛なのか、それとも計画的犯行なのか? 弁護士と検察の緊張感あふれるやりとりが続く。

   次の日の題材は「カチカチ山」で、大好きなおばあさんを殺したタヌキに敵討ちしようとしたウサギが被告人だった。タヌキが背負った薪に火をつけ、やけどの傷口に唐辛子入りの味噌を塗りつけて更なる苦痛を与え、泥船に乗せて池に沈めようとした殺人未遂罪に問われていたが、弁護側は情状酌量による執行猶予に持ち込もうとしている。

   一見ばかばかしいことを大真面目にやることによるおかしさが溢れており、これぞNHKの真骨頂だ。弁護士と検察官には、加藤虎ノ介、木南晴夏、モロ師岡、山本裕典など他のドラマでもよく見かける俳優をきちんと使っていて、ドラマとしてのクオリティも高く、15分では惜しいほどの出来栄えだ。

「起訴状」「情状酌量」「執行猶予」など法律用語、裁判の進め方お勉強

   気になる判決は、ドラマでは見せずに視聴者に考えさせるというのが大人としては物足りなく思えてしまうのだが、教育番組としてはこれが正解なのだろう。

   裁判の仕組みはもちろん、「起訴状」「正当防衛」「情状酌量」「執行猶予」などの法律用語、そして敵討ちの概念や、同じ事象でも見方によって正反対の結論が出る、ということが学べる内容になっている。

   たまたまだが、先日、東京地裁に傍聴に行ってきた。ばかばかしいことを大真面目にやるという点では、実は本当の裁判でも変わらない。1件はわいせつなDVDを売っていたおじさんが「わいせつ図画販売目的所持」の罪に問われた事件だった。犯罪の発生場所は山谷の玉姫公園近くの路上で、朝5時半から2時間ぐらい店を広げ、100円で仕入れたものを200円(安い! なんと良心的なおじさんだ)で売り、3年間で7万数千円(トホホ)の利益を得たというものだ。もう1件は駅ビルで若い女性が化粧品を万引きしたというものである。

   確かに犯罪だが、かなりどうでもいいことを、国家資格の最難関である司法試験を突破した優秀な人たちが、(本心はあきれているだろうが)真剣に話し合い、処遇を決めていく。

   この「昔話法廷」に勝るとも劣らない、気づきと学びの多い経験だった。誰でも行けるし何より無料! 一風変わった夏休みのご予定にお勧めだ。

   なお、2件とも裁判長は女性、1件は検事も若い女性で、若くて美人の法曹関係者が活躍しているのは現実であって、決してドラマだけではないこともお分かりになるだろう。もっとも、民間である弁護士より制度上では男女差別のない公務員、すなわち裁判官や検事の方がやりやすいのもまた現実のようだ。(8月10~12日あさ10時放送)

文   カモノ・ハシ
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