野放し!「生体肝移植」5人死亡の神戸メディカルセンターも「手術続ける」医療産業化で利益優先

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   重い肝臓病の患者を救う治療として、健康な人の肝臓の一部を使う生体肝移植手術を行った神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)で、患者9人のうち5人が術後1か月以内に相次ぎ亡くなる事態が起きた。

   神戸市は「医療産業都市」を目指していて、これまでに先端医療を担う研究施設に企業700以上進出し、今年度(2015年度)の経済効果は1615億円と予測している。その中核のひとつが、生体肝移植の世界的権威といわれる田中紘一医師を理事長に据え、昨年(2014年)に発足したKIFMECだった。海外からの患者受け入れを前面に打ち出し、生体肝移植手術を受けた9人のうち4人はインドネシアの患者だった。

   問題は9人の患者のうち5人が1か月以内に死亡するという生存率の低さだ。生体肝移植は全国の主要病院でも行っているが、1年後の生存率は83%で、KIFMECは異常に低い。9人の手術はすべて田中医師が執刀していた。

日本肝移植研究会の調査報告「3人の命を救えた可能性が高い」

   なぜ5人も亡くなったのか。生体肝移植の専門医で構成する「日本肝移植研究会」は今年4月(2015年)、4人目が亡くなった時点で異例の調査を実施し、「病院が適切な対応をしていれば3人の命を救えた可能性が高い」として、体制の不備などを理由に病院側に手術の中止を求めた。ところが、病院側はこれを無視して手術を続行、さらに患者1人が死亡する事態になった。

   研究会の報告書によると、1歳未満の男の子の手術では、必須とされた顕微鏡を行っていた。田中紘一医師は「クローズアップ現代」の取材に「顕微鏡を使わなくても手術はできる」と語った。

   学会の基準に照らして、手術をすべきではなかったと指摘した事例もあった。4歳の男の子は肝臓以外の臓器に進行性のがんがあり、健康な人の肝臓の一部を移植しても命を救えないことから、生体肝移植は適さないとされているのに手術は行われ、男の子は1か月後に亡くなった。これにも田中医師は「基準にしばられると移植を求める患者の希望に応えられない」と主張している。研究会幹部は「健康な人の体にメスを入れる生体肝移植は厳しい基準で行われるべきだ」と反論している。

本来はやってはいけない治療法!条件や施設の基準ない日本

   なぜ忠告を無視して医師の判断で勝手に手術を続行できるのか。生命倫理の詳しい社会学者の橳島次郎・東京財団研究員は「そもそも生体肝移植はやってはいけないことなんですよ。非常に特別な医療だという認識が日本にはなさすぎるのが一番大きな問題です」と次のように語った。

「生体肝移植は生きている健康な人の体にメスを入れる。医者としては最もやってはいけないわけで、やる以上はちゃんと公的に規定しないといけないはずです。よその国では、臓器移植法に生体移植が許される条件、施設の基準を含め規定し、この範囲なら正当な医療として認めると決めています。しかし、日本の臓器移植法は脳死移植だけで、生体移植の規定はないんです。どういう場合にこの特殊な医療を認めていいか示されていない。言葉は悪いですが、脳死移植に比べて、生体移植はほとんど野放し。誰でもできてしまうんです」

   国谷裕子キャスター「多くの待機患者さんが臓器の提供を待っているですけれどねえ」

   橳島研究員「だから、命が脅かされている人のために、ごくごく例外に、しかたなくやることなんですよ。ほんとはやってはいけない医療行為を、医療産業だと他国にどんどん売っていくのはどうかと思います」

   KIFMECは先月24日(2015年9月)に行った会見で、生体肝移植手術の継続を発表した。外部から経験豊富な移植外科医のサポートを受けるなど、一定の条件を満たしたことで手術体制はおおむね整えられたというのが理由という。その場しのぎのような対策で営利目的の医療産業化を進め、これまで通り海外からどしどし患者を受け入れるのは許されるのか。日本人の医療対する倫理、節度が問われている。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2015年9月30日放送「なぜ5人は死んだのか~生体肝移植の光と影~」

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