2018年 8月 16日 (木)

「世界一ニッポン鉄道」重大弱点!一元IT管理、複雑な相互乗り入れで間に合わぬトラブル対応

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   日本の鉄道旅客は年間236億人。朝のラッシュ時には、首都圏を1500本もの列車が1分と遅れずに走る。文句なしに世界一のシステムだが、いまこれが揺れている。ITで利便性が進む一方で、システムの脆弱性を浮彫りにするトラブルが立て続けに起こったからだ。

後手に回った架線切断や放火対策

   8月4日夜(2015年)に起こったJR京浜東北線の架線切断事故は、復旧に翌朝までかかって、35万人に影響が出た。原因は運転士のミスだった。本来、停めてはいけない架線の継ぎ目(バリアセクション)に信号停止してしまい、発車の時にショートしたのだ。

   最初の停止でATCは正しくバリアを避けるよう指示を出していたが、前方に電車がいたため、運転士は手動で停めた。バリアセクションで停まるとショートする危険があることを運転士は教えられていなかった。システムの導入は12年前だが、運転士には「ATC通りにしていればいい」としていた。JR東日本は「落とし穴、リスクを十分に洗い出しをしていなかった」という。

   信号がダウンするなどで8万人に影響した連続放火事件は、悪意には無防備であることを証明した。犯人の42歳の男はJRに恨みを抱いて、山手線、中央線で電力ケーブルや通信ケーブルを焼いては犯行を伺わせる画像などをネットに投稿していた。鉄道設備の情報は本やネットで簡単に得られる。

   JR東日本の運行は東京総合司令室が一元管理している。分刻みの緻密さも安全もITが頼りだ。信号を送る通信ケーブルは増加の一方で、線路脇に無造作に設置されている。やる気になればだれでも狙える。

   8月下旬、東急電鉄で起こったトラブルは別の問題を突きつけた。トラブルははじめは東横線、多摩川線、目黒線の3線だけだったが、電車が停まったために、相互に乗り入れている地下鉄、西武線、東武戦も動けなくなった。最終的に15路線に及び、36万人の足が止まった。相互乗り入れは便利で快適だが、ひとたびトラブルを起こすと影響は広範囲に及び、回復にも時間がかかる。この事故も2時間後には運行が再開されたが、ダイヤの乱れは終日続いた。

事故は減ったがトラブルは増加

   安部誠治・関西大学教授は「鉄道には安全と安定とが必要です。28年前に国鉄がJRになって、事故(安全)は半分になったが、トラブル(安定)はJRで2倍、民鉄で3倍になった。トラブルが広く波及すると都市機能を脅かすことになります」と話す。

   IT化では通信ケーブルは命だが、日本の鉄道は放火や妨害などの悪意への備えはない。バリアセクションのケースはITに人間が対応できなかった事例だ。30分以上の遅れをいう「輸送障害」はこの15年で3倍、年間5000件を超えている。

   トラブルに備える実例があった。宮城のJR仙石線は線路脇にケーブル類が見当たらない。災害に備えたATACS(次世代列車制御システム)の採用で、運行管 理が無線で行われているからだ。無線基地は複数あるから、ひとつが故障しても 別ルートで指令が出せる。妨害もない。2年後には首都圏の埼京線に導入される予定だ。ただ、金がかかる。

   京急電鉄の運行管理はITの一元管理ではなく、4つの運転区がそれぞれ手作業で1日に700本をさばく。事故が起こっても臨機応変。去年の調査では、10分以上の遅れは月1回未満と群を抜いていた。なんとなくホッとする話だ。

   かつて年間8000~9000件あった鉄道事故はいま800件という。大変な進歩だ。しかし、落雷事故で止まった私鉄で、復旧するまでの4時間、踏み切りが閉ったままチンチンと鳴り続けるのを見たことがある。中央制御なのでどうにもできないのだという。これも進歩というか。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2015年10月1日放送「『世界一の鉄道』に何が~多発する事件・トラブル~」

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