2024年 4月 27日 (土)

若者を信頼しよう!高校で始まった「主権者授業」中立性に戸惑う教師・・・生徒たちは「とにかくいろいろ知りたい」

   来年(2016年)の参院選挙から選挙年齢が18歳に引き下げられる。若者は政治に興味がないようで、東京・渋谷の繁華街で男子高校生に選挙権について聞くと、「誰に投票していいのかまったくわからない。まだ早い気がする」とはなす。女子高生も「あまり興味がない、難しい」

   20代の若者の過去3回の衆院選の投票率は、平成21年49.45%(全体69.28%)、平成24年37.39%(同59.32%)、平成26年32.58%(同52.66%)と全体を大きく下回っている。国谷裕子キャスターも「社会問題に財政問題、安全保障政策、農業、産業政策と、非常に複雑な課題について、(大人でも)自分の意見を持って議論することができるのでしょうか。突き付けられると、思わず後ずさりしてしまいそうです」

女子高生「複雑な課題こそ議論したい。無知っていうのは恐い」

   この秋から高校で「主権者教育」の授業が始まった。学校は何を教えようとしているのか。全国に先駆けて主権者教育に取り組んでいる神奈川県立湘南台高校(藤沢市)ではこんなふうに進めている。

   ある女子生徒は授業で討論を行ううちに、政治や社会の見方が以前とは変わってきたという。その転機になった授業を次のように話す。「授業で被災地の瓦礫を全国で受け入れることの是非を議論した時のことで、自分の意見を持つためには幅広い情報を集める必要があると感じました。無知っていうのは恐いことだと思ったんです。情報を知ることによって意見がガラリと変わってしまうこともあるし、まずは情報をたくさん自分の中に吸収することが大切なんじゃないかと思います」

   教える先生の方は難しい課題に直面している。意見が鋭く対立している現実の政治課題を取り上げるべきかどうか。主権者教育を担当する先生たちが集まった検討会で、担当の黒崎洋介教諭(27)が国会で大きな議論になった集団的自衛権を授業のテーマで取り上げたいと提案した。理由は「これからの社会を生きる生徒たちに、平和主義の問題をぜひとも考えてほしいと思うから」だ。しかし、他の先生から懸念の声が上がった。「進め方、こちら側の持って行き方で微妙になってしまうかなという気がする」「生々しく政治に近づきすぎちゃうかなという気がする。私たち教員が不用意に言ったことが彼らを扇動するようになっちゃうと困る」

   学校の教員には政治的中立性が義務づけられている。しかし、生徒たちは年が明ければ半年後に参院選挙が待っている。ある程度、現実の政治に沿った授業内容でないと意味をなさなくなるおそれがある。投票ではどこかの政党を選択しなければならないからだ。

神奈川県立湘南台高校「まず教師が逃げるのはよそう」集団自衛権を授業で取り上げ

   NHKが全国の公民科教員を対象に行ったアンケート調査で、「授業で政治を扱う際に『政治的中立性』を担保できるか」と尋ねたところ、7割の教員が「戸惑い・不安を感じている」と回答した。「教員の発言に保護者からのクレームが寄せられる心配がある」「中立でない、変更していると誹謗されたり、政治家が教員の処分を叫んだりしないだろうか」などの意見が添えられていた。

   しかし、黒崎先生はあきらめなかった。「学校が政治的論争問題から逃げてしまうことによって、生徒を白紙の状態で出してしまうことになります。むしろ、教員が多様なものの見方を示してあげることで、社会に出たときに主体的に公正に判断できる力を身につけることができるのではないかおもうんです」

   授業で扱うことについて他の先生の理解を求めた。湘南台高校では、授業の進め方はこれから検討するとして、来月から集団的自衛権の問題を扱うことに決めた。

   国谷の「中立性とは何か。どうやって担保できるんでしょうか」という疑問に、2人のゲスト出演者が次のように答えた。増田寛也・野村総研顧問は「政治的問題であればあるほど難しいですが、どういう問題であるにせよ、多様な意見があって、きちんと生徒たちに伝えていく必要があると思います。過度な干渉をするのはよくない」と話す

   西田亮介(東京工業大准教授)「(湘南台高が)一番良いケースと思います。ただ、どこの学校でも展開できるかとなるとやや不安がりますね。どういうコードに引っかからなければ教員の責任が問われないか、政治家からの圧力やプレッシャーがかかりにくくすることができるかを考える必要があります」

   70年ぶりの大改革という割には慌ただしい主権者授業だが、来年の参院選挙を控え教える側も教わる側も走りながら考え、学ぶしかないようだ。

*NHKクローズアップ現代(2015年10月21日放送「政治に関心ありますか?~『18歳選挙権』導入へ~」)

モンブラン

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