ミャンマー『アウン・サン・スー・チー政権』でどうなる?アジア最後のフロンティア

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   半世紀にわたって軍が政権を握ってきたミャンマーの総選挙が8日(2015年11月)に行われる。かつて軍の激しい弾圧にさらされていたアウン・サン・スー・チー率いる野党・国民民主連盟(NLD)が、与党・連邦団結発展党(USDP)を圧倒する勢いだ。1991年にノーベル平和賞を授与されているスー・チーは国際的にはもちろん、国民的人気も高いが、今後の道のりはなかなか複雑らしい。キーワードは「経済」だ。

   与党幹部は大規模集会で支持者にこう訴えた。「2010年に携帯電話を持っていた人はいましたか」

   (支持者から「持っていません」の声)

   幹部「今はどうですか」

   (支持者から「持っています」)

7%成長続ける経済

   11年に新憲法の下で発足した現在のテイン・セイン政権は、軍事政権の流れを組むとはいえ、経済の面では確実に成功している。これまでの5年間で毎年7%の経済成長を実現し、各国からは「アジア最後のフロンティア」と見られているのだ。

   ミャンマーの政治・経済が専門の政策研究大の工藤年博教授)が言う。「たしかにこの5年間、USDPが経済成長を導いてきたという手腕はあります。ただ、これもこれまで50年間、軍事政権でマイナスだった経済の蓋をちょっと開けたからで、ある意味ではラッキーな時代でした。むしろ経済運営の手腕が問われるのは、この次の政権だと思います」

   国谷裕子キャスター「スー・チーさんの人気は絶大と思いますが、より豊かな生活・賃金の上昇などを訴えているのでしょうか」

   工藤教授「実はですね、スー・チーさんあまり現実的な利益のことを訴えていません。最大のポイントは『法の支配』ということで、具体的には軍支配からの脱却と国民の自律と行動というものです」

   国谷「よく分からないですね」

   工藤教授「たとえば、スー・チーさんが演説している際、聴衆から『あなたは私たちに何をしてくれるんですか』と聞かれると、『あなたが政府に何をしてくれと言わなくてもいい状況にしてあげます』と答えるんです。これは国民が自分たちの足で立って自分たちで選ぶ体制を作ってあげますということですが、ある意味では国民に厳しいことを言っているということでもあります」

日本企業も注目する総選挙

   ミャンマーの総選挙後を注視しているのは国内外の経済界だ。選挙後を見据えた動きもすでに活発になってきている。ミャンマーの経済人も右往左往の真っ最中だが、日本の企業関係者もそれは同様だ。日本人ビジネスマンからは「NLDが結構議席を取ると思うんですが、それでまた今までの体制とガラっと変わるのはどうなのかなという不安があります」「政治が混乱すると、一般の人、とくに労働者が影響を受けると思っています。安定した政権・政治が一番だと思っています」などの声が上がっている。

   国谷「日本の方々が心配しているのは何ですか」

   工藤教授「スー・チーさんが軍事政権時代に『反ビジネス』と思われるようなことを時々言ってたんですね。たとえば『投資をしないでくれ、貿易もしないでくれ』、場合によっては『観光にも来ないでくれ』と言ってた時代もあるんです。それはそういった活動が軍事政権を支援してしまうからということなんですが、これが記憶に残っている人も多いと思います」

   軍と二人三脚でやってきたミャンマー経済界が、新政権と協力的な関係を築くのかが注目点のようだ。

ビレッジマン

*NHKクローズアップ現代(2015年11月2日放送「『最後のフロンティア』は開かれるのか~ミャンマー民主化の行方~」)

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