2024年 4月 27日 (土)

<黄金のアデーレ 名画の帰還>
クリムトの名画返還請求裁判!取り戻したいのはナチスに奪われた幸せだった一家の記憶

   ウィーンの美術館に収蔵されるクリムトの名画「黄金のアデーレ」の返還を求めて、オーストリア政府を相手取って裁判を起こした82歳の女性の実話をもとにしている。主人公のマリアをアカデミー主演女優のヘレン・ミレンが演じている。

   黄金のアデーレ(アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I)は『オーストリアのモナ・リザ』と称される絵画だが、もとはマリアの叔父がクリムトに妻アデーレをモデルに描かせたものだった。マリアの自宅の居間に飾られていたが、第二次世界大戦中にナチスに奪われてしまう。叔父も他の家族も亡くなり、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいとマリアは訴えたのだ。

82歳女性の実話

(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015
(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

   返還を請求したのは金銭目的ではなく、マリアにとっては、ナチスに奪われた自分のアイデンティティを再び取り戻すためのことだった。マリアは駆け出しの弁護士・ランディとアメリカから故郷のオーストリアへ飛ぶ。

   物語はマリアの現在とランディ、そしてウィーンで暮らしていた頃のマリアとその家族たちという2つの時代の出来事が交互に展開される。家業が成功して裕福だったマリアの一家は、ユダヤ系だったことでナチスから財産をすべて奪われ、軟禁される。いつ殺されるかわからない。結婚したばかりのマリアと夫は命を繋ぐため両親を置いてアメリカへ逃げる。

いまだ戦争の暗い影

   マリアとランディがウィーンに着いて早々、ジャーナリストというチェルニンが近づいてきて、その後もなにかとマリアたちを手助けする。毎回あまりに都合のよすぎる登場で、なにかウラがあるのだろうとずっと気になっていたが、最後にチェルニンの口から手助けするある事情が語られる。マリアは黄金のアデーレがナチスの手に渡ったいきさつに衝撃を受け、戦争を経験していない世代にまで暗い影を落とし続けていることを知る。

   上映時間は109分とコンパクトにまとめられているので見やすい。戦争に翻弄された祖父母や父母を持つランディやチェルニンら若者たちの心境を、もっと掘り下げて描いてもよいのではと思う。

バード

おススメ度☆☆☆

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