「サバイバーズ・ギルト」犠牲になった同級生と成長してきた気仙沼・階上中学校あの年の卒業生たち

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5年ぶりにみんなが集まった成人式

   去年(2015年)12月、成人式の準備で卒業以来初めて仲間が集まった。卒業式では忘れられない光景があった。亡くなった畠山郁也さんの遺影を抱いて参列した父親の俊一さんの姿だ。つらいだろうと、その後も連絡できずにいた。「今なら会えるかも」と滝田さんと高橋さんらが足を向けた。

   俊一さんは「みんな大人になった」と笑顔で迎え入れた。母親のあき子さんは郁也さんが好きだった五目おこわを作った。「よかったね。同級生とお酒が飲めて」とあき子さん。俊一さんも避けてきたのだった。「心に蓋をしていた。実際に会ってみて、蓋が開いたら、嫌な感じはなかった」。あき子さんも「思い出も一緒に語れるしね。ちょっと前へ進めた」と話す。

   成人式に集まった仲間たちは、みなそれぞれに「あの日」と向き合っていた。これからもそうだろう。

   国谷裕子キャスターは作家の天童荒太さんと階上中学校にいた。「心模様はさまざまで、切ないですね。思い出すことが少なくもなるとも・・・」

   天童「亡くなった人を支えに生きてきたことが、一人で生きる強さを付けてきたということなのでしょう。悪いことではない。成長と受け止めていいとおもいます」

   天童さんは「サバイバーズ・ギルト」という言葉をあげた。「生き残った人が抱く罪悪感、自分を責める心理です。亡くなった人への愛情が豊かで思いが深いから起こる。よく、『忘れなさい』というが、そうではなく認めることです。それがあなたの愛なんだと。精一杯生きることが、誠実な祈りになるのです」

   死は常に理不尽だ。災害だけでなく事故や病気もある。太平洋戦争では70年経った今もそれが続いている。一部で忘れかけている人たちがいるようだが、あれらは「愛や祈りが足らない」ということか。なるほど合点がいく。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2016年3月10日放送「シリーズ東日本大震災 大切な人を失って~20歳 それぞれの旅立ち~」)

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