2018年 9月 20日 (木)

死を前にした母、何もしてやれぬ無力さに苦しむ娘・・・家族に最期に遺してくれていたある贈り物

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(C)Sacher Film . Fandango . Le Pacte . ARTE France Cin?ma 2015
(C)Sacher Film . Fandango . Le Pacte . ARTE France Cin?ma 2015

   自伝的な作品が多いナンニ・モレッティ監督は、今度は母の死に立ち会った体験を描いた。母、娘、孫の3世代にわたる女性ドラマで、モレッティも主人公の兄・ジョバンニ役で出演している。

   映画監督のマルゲリータ(マルゲリータ・ブイ)は新作映画の撮影に取り掛かっているが、恋人と別れ、娘は進路問題を抱え、さらに入院中の母親アダの世話をしていることもあって、撮影が思うように進まない。追い討ちをかけるように、病院から母親の余命が短いことが知らされる。母親の支えになれない自分の無力さを嘆くマルゲリータに、母はある「贈り物」を遺していた。

登場人物それぞれに見出す「われわれ」

   マルゲリータの苦悩が身に沁みるように伝わってくるのは、この映画にはさまざまな「われわれ」が潜んでいるからだろう。母親の看病のために仕事を辞めてしまう兄もわれわれであり、兄のように生きられないマルゲリータの葛藤、死にゆく母親もわれわれだ。

   モレッティの映画は目を閉ざしていること、耳を塞いでいることを蘇生させていく。スペクタクルとは無縁の極めて現代的な映画といえるだろう。われわれが直視しなくてはいけないはずの「現実」だけが存在している。

   マルゲリータと兄の生き方は違うが、母親と過ごした日々は共有している。母に苛立ちをぶつけ、その苛立ちを受け止めてくれる強さを2人は知っている。しかし、実は何も知らず、最後に教えられて悔やむ。「あなたは幸せだったか」と問いかける時には自分はもう取り残されている。モレッティはそう映画で語っている。

   「死に向かう母」を通して家族が集まり、会話をし、苦悩をともにし、自分を見つめ直しているマルゲリータたちに、現実以上希望未満の感覚を覚えるはずだ。この感覚が「明日に向かって生きる」という主題なのではないだろうか。

おススメ度☆☆☆☆

丸輪太郎

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