浅田真央「最高の演技をして終わりたい」ベテランになって知った「休みながら滑る」
SPで出遅れても悲壮感なくのびのびフリー
浅田はかつてタッグを組んでいたローリー・ニコルさんに再び振り付けを依頼することにした。リンクで疲れ切った浅田を見たノコルさんは、こう声を掛けた。「楽しんで。楽しむことを忘れないで。とても大切なことよ」
ローリーさんは演技についても細かい修正を求めた。象徴的なのが演技冒頭の恋しい男性を待ちわびる場面だ。浅田はいつもの癖で、2回まばたきをしてしまった。するとローリーさんは言った。「あなたは顔を動かすとき、いつもまばたきをする。そのせいで私は現実に引き戻されてしまう」
目を見開き、愛する男性を待つ女性の思いをまっすぐに表現することを求めたのだ。
そして迎えた世界選手権。浅田はショートプログラムで9位と出遅れたが、悲壮感はなかった。翌日の公式練習に浅田の姿はなかった。「休養」をとったのだ。「10代の頃は100%練習に参加していたけど、今は逆に『休みます』みたいなことも大切だと思います。考えることも、練習することも忘れたりという時間を持てたので良かった」
気持ちも切り替えて臨んだフリーで今季自己最高点をマークした。
杉浦友紀キャスター「なぜか浅田選手の涙や笑顔に多くの人が心を打たれてしまう。これはなぜなんでしょうか」
子供の頃からフィギアスケートを見続けてきたゲストのミッツ・マングローブが言う。「現在のよりどころのない時代の中で、ちょうど集約できる存在としてフィットしてしまったんだろうなと思います」
世界選手権の最後に見せた笑顔は、新たな自分に信頼を持てたということだろう。
ビレッジマン