穏やかな最期をケアする「臨床宗教師」患者の話を聞いて一緒に人生の価値探し

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   岐阜・大垣市のホスピス。松岡君子さん(67)は末期の大腸がんで余命わずかと診断された。不安は募り、夫に「1人で死ぬの嫌や。お父さんも一緒にきて」というほどだった。野々目月泉さん(60)が寄り添って、君子さんの話を聞いた。

   「信仰はない。仏壇もない。でも、病気になると、神様、仏様」などと、ごく普通の死生観を口にした。入院9日目、見た夢を語り始めた。「阿弥陀様? お釈迦様? 後ろにいっぱい立っていてパワーが光っていた」。野々目さんは死を迎える準備が始まったサインと見た。そこで手紙を書いて枕元で読んだ。「光に包まれて旅立つその日まで、この世の生をつむぐあなたの戦いを、私は美しいと思います。心からエールを。そして感謝を」

   目をつぶって聞いていた君子さんが「ありがとう」と繰り返した。その2日後、君子さんが呟いた。「紫の海の上で、月の光に照らされながら、少しづつ上がっていきます。嬉しくて、嬉しくて、ありがとうございます。そういう気持ちにさせていただいて」

   看取った夫は「眠るように、潮が砂浜に吸い込まれるように逝ったよ。絶対幸せだった。間違いない」と言う。

   野々目さんは浄土真宗の僧侶で臨床宗教師だ。医師、看護師とチーム医療の一員として、末期患者が穏やかな死を迎えるようケアにあたる。「患者の話を聞いて、理想の死のイメージを探り、その人がすがりたいものとつなぐ役割ができたらいい」と語る。

必要とされながらまだ40都道府県に200人

   日本で昨年亡くなった人は130万人。多死社会に突入したといわれる。末期の患者の苦痛のうち、肉体的、精神的なものは医療が受け持つ。社会的苦痛(家族、金、仕事)にはソーシャルワーカーなどがいる。しかし、死への不安など「スピリチュアル」な苦痛に答える専門家はほとんどいなかった。臨床宗教師は患者の話を聞くことが中心だ。

   東日本大震災で遺族のケアに宗教者が寄りそう姿を見て、宮城の医師・岡部健さん(故人)が提唱した。2012年に東北大で養成が始まり、その後、8大学に広がった。現在、40都道府県に200人がいる。穏やかな死を導く専門職だが、まだ知られていない。

   全国組織「日本臨床宗教師会」もこの2月に発足したばかりだ。顧問に就いた医師の田中雅博さん(70)は自らもがんで余命2か月といわれながら、臨床宗教師の必要を説いて回っている。都内で開かれたシンンポジウムで「話を聞いて、人生の価値に気づいてもらうことだ」と熱く語った。

   僧侶の資格を持つ。若い頃はがん治療の最前線にいたが、患者の死への不安を取り除けない無力感を常に感じていた。平成6年に栃木・益子町に診療所を開いて、仏教の教えで末期患者に寄り添う試みを始めた。話に耳を傾け、人生の価値を一緒に探す。これまでに500人以上を看取った。2年前、末期のすい臓がんとわかり、肝臓やリンパ節にも転移していた。「自分の番が来ると、怖いし苦しみでもある。誰も聞いてくれないまま寂しく死んでいったら、これほど辛いことはない」

壇蜜「一人ひとり違う答え見つける大切さ痛感」

   タレントの壇蜜さんはかつて葬儀関係で働いていたことがある。「患者の思いをつなぐというのが印象的ですね。田中先生でも、聞いてもらえないのは辛いとお話しています。一人ひとり違う答えを見つけていく仕事がいかに大事かと思います」

   東邦大学医療センターで緩和医療専門の大津秀一さんは「医者は病気を直してくれる人。患者は生死の問題を話しづらい。しかし、宗教家の人たちには話します。臨床宗教師は支える存在になっています」という。

   松村正代キャスター「壇蜜さんはどんな死を迎えたいですか」

   壇蜜さん「タレントは嫌われて好かれて、が仕事ですから、泣かれて笑われて、が同じ比率くらいの終わり方がいいかなと思います」

   見事!

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代+(2016年8月25日放送「『穏やかな死』を迎えたい~医療と宗教 新たな試み~」)

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