「老朽マンション」建て替えか修繕か・・・同意3分の2緩和でかえって難しくなった住民合意

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   築40年以上の分譲マンションは現在56万戸。これが10年後には162万戸、20年後には316万戸に増える。ところが、この40年間に分譲マンションで建て替えられたのはわずか227件で、老朽マンションの2%にも満たない。

   このため、国は今年(2016年)6月に都市再開発法を改正し、これまで所有者の5分の4の同意がなければ進められなかった建て替えを、3分の2以上の同意で進められるように改めた。建て替えを促そうとしているのだが、かえって推進派と反対派の対立が激化している。

長く住んでる高齢者ほど締め出し

   200世帯以上が暮らす東京都内の築40年以上の分譲団地も老朽化が進み、建て替えか修繕かで住民代表が3年以上も話し合いを続けてきた。建て替え推進派は「コンクリートの劣化が進み、このままでは膨らんでコンクリートが爆裂する。耐震基準も満たしていないので建て替えやむなしと考える住民が多い」と主張する。修繕派は「ていねいに使って長生きさせたい。何が何でも建て替えをしなきゃとは思わない」と反論する。

   推進派はルール改正を受けて、建て替えと同時に高齢者施設を建設するなど、新たな住民を呼び込む青写真を作った。修繕派の主張は逆に厳しくなった。「建て替えにはお金が大変です。うちなんか遺族年金の生活ですから」「同意が3分の2に緩和されたことにより数の論理で追い出しができるわけで、建て替えを推し進めれば、多くの住民が団地の生活をあきらめて出ていかざるを得ない」というのだ。

   8月1日に会合が持たれたが、溝は深まるばかりだ。結局、これまでの住民代表だけの議論ではなく、全住民の意見を汲み取り、白紙の状態から検討し直すことに決まった。

求められているのは「修繕応援政策」

   久保田佳由キャスターは「法改正で緩和されても、合意形成の難しさは変わっていないのがよくわかりますね」と指摘する。住宅政策が専門の神戸大大学院・平山洋介教授は次のように話す。

「合意形成を急ぐ前に、選択肢を増やす必要があります。政府は建て替えが進まないので応援しようということなのでしようが、実は建て替えが可能な団地やマンションはそんなに多くないんです。むしろ少ない。多くのマンションで修繕しながら住み続けることになるのでしょうが、こちらを助けようという政策、制度は進んでいない。一つの選択肢で合意形成するのではなく、複数の選択肢を用意する。急がずに多角的に検討すれば、落ち着くところに落ち着きます。そのためには多角的な選択肢が必要でしょう」

   数字をいじっただけの法改正では、市場原理主義に基づいた安直な経済的弱者切り捨てと受け取られてもやむをえまい。

モンブラン

NHKクローズアップ現代+(2016年8月31日放送「どうするマンショントラブル!?『新ルール』で住民激震!?」)

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