宅配そこまで便利な必要あるか?ヤマトの改革で始まった「利用者もコスト負担を」

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   「きょう買って、あす届く」「配送無料」は当たり前、都会では「1時間で届く」なんていうのまである。ネット通販の便利さは買い物の形を変えた。ところが、宅配最大手のヤマト運輸がサービスの抜本見直しを打ち出した。年間37億個を扱うが、従業員へのしわ寄せが看過できなくなっているのだ。時間指定が少ない正午~午後2時の宅配を廃止、夜9時までの時間の見直しなどだが、労組の「昼飯も食う時間がない」という訴えに答えたものだった。

   全国に4000の拠点を持つヤマト運輸の三鷹支店のドライバー小川浩平さんは入社3年目だ。扱う荷物は毎年1割づつ増えている。この日は150個。3年前より30個増えた。時間指定のサービスは午前と夜間に集中する。午前の3時間に60個配るには1個3分だ。配り終わったのは正午直前だった。

   問題はこれからだ。不在による再配達がのしかかる。電話がかかって、急遽ルートを変えたり戻ったり・・・それでもこの日は30個が残った。国の調査では、不在による再配達は2割に達するという。37億個の2割は7億4000万個だ。これがドライバーの長時間労働につながっている。

「送料無料」「再配達」で仕事増えて利益低下

   運送業の労働時間は2368時間で、全産業平均より430時間も長い。心身に異常をきたすドライバーも少なくない。ネット通販が増えた頃から顕著になった。急伸する市場規模は13兆円で、さらに伸びている。ところが、宅配会社の経営は悪化している。ヤマト運輸は2年連続減益の見通しである。理由はボリュームディスカウントにある。通販が大量の荷物の発注を保証する代わりに、配送料を引き下げる契約だ。10年前と比べ、1個あたりの収入は1割以上減っている。

   これは下請けの運送会社にものしかかる。5年前に宅配に参入したが、今はほぼ手を引いた運送会社の横田浩崇社長は「値段設定が安すぎる」という。始めた頃は100個で1万8000円だった。単価は180円だ。それがいまは160円。ドライバーは30人いるが、「経費を引いて1日1万円だと合わない。時給1000円を割る計算になります。他にも仕事はあるから、宅配にしがみつくことはない」

   物流コンサルタントの刈屋大輔さんは「ネット通販は価格や品揃えの競争から、注文から届くまでの時間の競争になった」という。「送料無料というが、実際は通販が代金の中から払っている。それをいかに下げるかという話だから、配送単価を上げるのは難しいんです」

コンビニ、駅に「宅配ロッカー」

   ヤマト運輸は再配達を減らすために、利用者の協力を求めている。LINEで配達予定を通知し、都合が悪いと時間を変更して1回の配達で済むようにする試みだ。自宅以外で受け取れるよう、コンビニの利用に加え、駅などに「宅配ロッカー」を設置し始めている。いまは170台だが6年間で5000台にする。どちらも想定以上の利用頻度だが、まだ決定打にはなっていない。

   ヤマトホールディングスの小菅泰治常務は「サービスはコストがかかることを認識していただきたい」という。刈屋さんは「再配達のコストを誰が払うか。通販か、利用者か」という。今は宅配業者が負担しているわけだが、ヤマトが声をあげたことで、業界が動くかもしれないともいう。

   タレントの真鍋かをりさんが「宅配は優しすぎる彼氏みたいな」とうまいことをいう。「慣れて当たり前に思っているけど、便利すぎ。消費者側もできることはありますよね」

ヤンヤン

クローズアップ現代+(2017年3月2日放送「"はやくて安い"ネット通販に危機が!?~宅配サービス・過酷な実態~」)

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