2024年 4月 27日 (土)

北朝鮮暴走で大張り切り自民党防衛族!「敵基地先制攻撃」「防衛費GDP2%」提言

   自民党の安全保障調査会は20日(2017年6月)、次期中期防衛力整備計画(2019年)への提言の中間報告をまとめた。北朝鮮、中国の動きを踏まえて、敵基地反撃能力、防衛費GDP2%など、専守防衛の枠を踏み越えかねない内容も含む。サイバー攻撃能力、早期警戒衛星、巡航ミサイル、エスコート妨害機などの整備・検討も求めている。

   野党はもちろん、与党内からも反対・慎重論があるが、トップが安倍晋三首相だけに突っ走る恐れが強い。

   議論の流れを決めたのは、3月の北朝鮮の弾道ミサイル4発同時発射だった。小野寺五典・元防衛相は「北朝鮮は在日米軍基地を攻撃する訓練だといい、日本への攻撃です。しかも、複数のミサイルを同時に着弾させる能力を誇示しました。日本は防衛できるかという危機感があります」と語る。

   たしかに、現有の迎撃兵器は単発のミサイルには対応できても、複数同時には難しい。小野寺氏は「確実な方法は発射前のミサイル基地を叩くこと。これは先制攻撃ではなく、反撃。専守防衛の範囲内だ」と強硬だ。

報復能力見せつけてブラフ

   敵基地攻撃は古くて新しい議論で、政府は「他に手段がない場合、憲法が認める自衛の範囲内である」という統一見解(1956年)を出しているが、実際の攻撃兵器の保有には慎重で、保有計画もない。

   中間報告には、野党から「専守防衛を崩す暴挙」「憲法違反」「現在の安全保障環境は、そうした能力を必要とするものか」「本当に抑止力になるのか」と批判・疑義がぶつけられた。元外交官でMITシニアフェローの岡本行夫氏は「報復能力は抑止力になる」と肯定的に見る。

   しかし、添谷芳秀・慶大教授は「軍事戦略的にはほとんど意味がありません。全面戦争を想定して初めて使える能力だからです」と否定的だ。さらに、「抑止力が本当に抑止に寄与するのか」と、安全保障環境の見方にも疑問符をつけた。

トランプ大統領が防衛費増額要求

   もうひとつの論点である防衛費増額については、議論はかなり政治色を帯びる。中谷元・前防衛相は「中国が年々2けたのびをしているのに、日本は現状維持で、パワーバランスが取り返しのつかない状況になった」という。中国とバランスするつもりなのかと突っ込みたくなるが、中谷氏はアメリカのアーミテージ元国務副長官から「トランプ氏はより積極的な協力を求めてくるだろう」と言われたという。そのトランプはNAT0加盟国に「GDP2%」を要求した。中間報告は、それに乗っかったかのように見える。

   日本の防衛費は昭和61年度の3兆円から徐々に増えて、平成9年度以降は5兆円規模が続いている。金額は増えているが、対GDP比1%は保たれている。これが専守防衛の歯止めとなってきた。中間報告はこれを2%にという。岩屋毅・元外務副大臣はこれに異を唱える。「防衛費はあくまで抑制的であるべきです。少なければ少ないにこしたことはない。社会保障費を切っての防衛費突出は、国民の理解を得られません」

   これは正論だろう。添谷教授は「財政再建は焦眉の急。防衛費だけが聖域にはなりえない」という。岡本氏も自衛隊の正面装備が切り込まれている現状を憂慮するが、「GDP2%は無茶。日本はアメリカとの同盟の中に抑止力強化を確保すべき」という。日本の防衛力を考える大前提は日米同盟という点で両者は一致した。

   岡本氏によると、2000年を100とすると、中国の軍事力はいま700、日本は101だという。北のミサイルにも打つ手がない。防衛族が危機感を抱くのもわからないではないが、ではどれだけ整えたら十分なのか。軍拡競争の愚かさをわれわれは十分学んだはず。幸か不幸か、いまの日本に軍拡の余裕はない。アベノミクスなんていう危うい虚構がイチコロで吹っ飛ぶからだ。しかし、それが歯止めというのでは、話が逆であろう。

   ※クローズアップ現代+(2017年6月22日放送「岐路に立つ防衛政策~"敵基地攻撃""防衛費"は~」)

文   ヤンヤン
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