2018年 7月 19日 (木)

九州より広い「所有者不明土地」相続登記せず放ったらかし・・・周辺住民も行政も迷惑

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   昨年9月(2016年)の台風で崩れた宮崎市の住宅地の裏山は、1年経った今も復旧できずにいる。相続者が登記の更新をしなかったため所有者が50人近くにもなって、手がつけられないのだ。所有者不明土地問題の典型である。

   法務省が出した推計では、全国の所有者不明土地は410万ヘクタールで九州をはるかに上回る。かつては山間部の土地が多かったが、政令指定都市や東京23区にも増え、周辺住民や行政にさまざまな影響を与えていた。

   東京・葛飾区の住宅密集地の道路拡幅工事で、一部だけが50センチほど狭くなっている。「ヘビタマ」というらしい。蛇が卵を飲んだように膨らんでいるからだ。わずか30坪ほどの土地だが、所有者が多すぎて買収や工事の交渉ができないのだ。元の所有者が亡くなった後、登記の更新がなされなかったために相続人が子から孫へとねずみ算式に増え、区は10年かけて調べたが、全容がわからない。「区に提供する」という相続人もいるが、法的には全員の同意がないと手がつけられない。

危険な老朽ビルでも取り壊せない

   なぜ登記更新をしないのか。愛媛県の土地を相続した小金井市に住む孫娘は、買い手もつかず、自治体も「いらない」という土地の登記をしなかった。登記には最低でも10万円はかかる。「死んだ土地ですから」という。これが所有者不明土地が生まれる大きな理由だ。

   影響は大きい。土地関係者52人全員死亡で道路事業ができない(岡山)、マンションの所有者の一部が不明で道路用地の買収がきない(横浜)、所有者が海外にいて境界の確定ができない(札幌)などのトラブルが起きている。

   神戸市の市街地の真ん中に鉄筋3階建てのビルがある。老朽化で壁が落ちて危険で、家電ゴミの捨て場にもなっていたが、所有者がわからず、市は応急措置でネットを張ったが、費用の90万円が戻ることはない。税の徴収もできない。

   所有者不明土地問題研究会座長の増田寛也さんは「所有者不明土地は2040年には、北海道に匹敵する700万ヘクタールを超えます。所有者を追跡できる仕組みを作らないといけない」と警告する。現在は、登記は国、課税台帳は市町村、農地台帳は農業委員会と管轄が分かれている。個人情報、とりわけ固定資産税台帳関係は管理が厳しいが、「公共目的のためには情報共有を認める必要がある」と増田さんはいう。

   早稲田大学大学院の山野目章夫教授は「相続・登記は登録免許税がかかるが、これをとらない、あるいは減らす。戸籍の問題でもあるから、電子情報としてつなぐこともできます」と説明する。

山形では不動産業者や司法書士が再活用プラン

   すでに動いている自治体もあった。京都府精華町は総合窓口で情報を把握し、死亡届に来た人に土地登記を促すなどして登記件数が増えている。山形県鶴岡市では不動産業者、司法書士などがNGO「ランドバンク」を立ち上げ、持て余した土地、家屋の再生などに取り組んで、5年間で70件の問題物件を解決した。いまでは「不明者」が相談に来るまでになったという。

   山野目教授「いらなくなった土地を引き取るのではなく、新しい地域を作るという未来の問題として、みんなで考える必要があります」と話す。

   日本には戸籍制度がある。せっかく揃っているデータの活用を、役所の縦割りや法律の壁、高い登記料が阻んでいるとはおかしな話だ。

NHKクローズアップ現代+(2017年9月28日放送「都市に広がる"所有者不明土地" あなたの実家も要注意!?」)

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