2024年 4月 26日 (金)

「緑のたぬき」の悪い評判ばかり 安倍政権の是非より希望・小池代表の失速にフォーカス

   「緑のたぬき」(週刊文春)の評判がすこぶる悪い。小池百合子のことである。

   彼女が率いる希望の党の支持率がガタ落ちなのだ。候補者選定に「憲法改正に賛同しない者」「安保法制に反対した議員」を"排除"するといったり、党代表に就任しながら出馬しないという不可解な行動に、有権者が呆れて離れてしまったのだ。自業自得ではある。

   今日(10月12日)発売の週刊新潮、週刊文春、ニューズウイーク日本版(11日発売)は「傾国の小池百合子」「小池百合子の化けの皮を剥ぐ!」「小池刺客劇場の危うい幕開け」という大特集を組んでいる。

   だが、今回の選挙で問われるべきは「安倍独裁政権の是非」である。

   小池も希望の党結成時には「安倍政治を許さない」「今回は政権選択選挙」だといっていた。

   選挙戦に入って最初に出す号では、安倍政権の数々の悪政や森友・加計学園問題疑惑を「徹底追及する」のが、やるべき仕事ではないのか。私はそう思う。

   週刊文春、週刊新潮がいっているように、寄せ集めの「絶望」(週刊文春)「ポンコツ」(週刊新潮)候補ばかりでは、とても政権奪取などできないこと、長年週刊誌をやってきた人間ならわかっているはずである。

   そんなことをぶつぶついいながら各誌を読んでみた。週刊文春は、希望の党への期待感がガラッと変わったのはやはり「排除」発言からで、「高揚感からか、思わず口にしてしまった」(希望の党関係者)そうだ。

   これで、支援組織を全国に持つ連合の神津里李生会長を怒らせてしまった。

「一強政治の問題点は包容力に欠ける点。それなのに、それを批判する小池さんが排除と言ってしまった」(神津会長)

   それをいっちゃお終い、である。

   小池の弱味は、時の権力者にすり寄るばかりで、自らがリーダーになった経験に乏しいため、組織がでかくなれば側近に調整や根回しを任せるしかないのに、小池にはそれができない点だと、政治部デスクがいっている。

   その側近にも人材がいない。若狭は小池が出馬するかどうか模索している段階にもかかわらず、NHKの番組で「小池百合子の出馬は次の次ぐらい」と発言し、小池から「政局感がない。もうテレビに出さない」と吐き捨てられたそうだ。

   候補者リスト作りでも、若狭や民進党から来た議員との間で意見が合わず、政党の体をなしていなかったという。

勝負から逃げ出し投開票日はパリで

   そんな混乱や玉がなく石ばかりの候補者を見て、土壇場まで出馬を模索していた小池は、これでは勝てないと判断したのだろう。

   「実際は単に機を見るに敏で、負けそうな戦いからは逃げ出すのが"小池流"なのです」(閣僚経験者)

   こうした小池のやり方に、都民ファーストの都議2人が反発して離党した。その1人、音喜多駿が知人にこう愚痴ったという。

   「小池さんには思想がない。自分のことが好きな人、自分ファースト。(都民ファは)緑の宗教だよ。このまま残っても、小池さんの召使いになるだけだ」

   見かけは頼りないボンボンタイプだが、小池の本質を見ている男だ。

   小池にとって今回の衆院選は自分の中では終わっているのだろう。週刊文春によれば、投開票日はパリの空の下だそうである。

   週刊新潮は、ユリノミクスという経済政策をこう批判する。

   「その中のひとつが〈地球に希望を〉であり〈花粉症ゼロ〉である。いい歳をした大人がひねり出したのがこの『小学生作文』だったことが、同党の『実力』を物語っていると言えよう」

   この中には地方には関係のない「満員電車ゼロ」もある。

   こんな党に、民進党を解体してまで参加した前原代表は、憔悴しきっているそうだが、なまじ当選などしないほうが体のためであろう。

   小池の考える選挙後のシナリオは、こうだという。

   「憲法改正が悲願の安倍さんに、改憲の時だけでいいからぜひ協力してほしいと頭を下げさせる。そうして、永田町で自分を干してきた安倍さんにリベンジを果たす」(希望の党関係者)

   自分の恨みを晴らすために安倍と手を組むというのでは、「安倍政権打倒」のために一票を投じた有権者の意思を踏みにじることになるではないか。

   もっともニューズウイーク日本版で、政治コンサルタントのマイケル・チュチェックが書いているように、

   「元民進党員に銃を配り、友人たちを処刑する銃殺隊に加われと命ずるに等しい。忠誠心を試し、過去の人間関係を全て切り捨てさせる。そのやり方は、旧ソ連の独裁者スターリンなら高く評価したことだろう」

   小池の歴史修正主義と保守的な政策への危惧に言及し、他の筆者は、アラブ諸国との関係は深いが、激しい嫌韓・嫌中の姿勢はバランスを欠いていると指摘している。

希望の党のあきれた候補者たち

   候補者たちのポンコツぶり。東京2区から出馬している鳩山太郎(43)が、下品な下ネタを口走る理由を週刊新潮が聞いてみたら、「メシを食う時まで聖人君子だったら、選挙期間中、持たないですよ」と答えた。

   長野2区の下條みつ(61)は3代続けての政治家家系だが、元秘書にいわせると「下條は暴言、暴行議員の"走り"みたいな存在です」。件の秘書の顔面を殴って自分の指から出血したら、「おめーのせいで血が出ちまったじゃねーか!」とキレたという。

   東京7区の荒木章博(64)にはセクハラで訴えられ、和解金を払った過去があるという。これだけでも、そのポンコツぶりがわかろうというものである。

   一方の安倍首相は、希望の党の失墜で悠々かといえば、そうではないと週刊文春が報じている。

   一時は、ヤジや帰れコールに怯えて、街頭演説のスケジュールを非公開にする「ステルス作戦」をとっていたため、来るのは自民党支持者だけで、無党派層への広がりはなかった。

   それで安心して演説ができたかというとそうではないそうだ。ネットで「Aアラート」「国難来る」というハッシュタグが付いて拡散し、演説場所が漏れていたJR柏駅では、演説が始まるとすぐに「辞めろ」コールが始まり、「昭恵を出せ、加計孝太郎を出せ」との怒号が飛び交い、「小学校低学年ほどの男の子が、〈うそつきはどろぼうのはじまり〉という手作りのプラカードを掲げる姿も」(週刊文春)

   テレビの党首会談では、加計学園問題を追及され、顔をしかめるシーンもあったが、"お友だち"の見城徹幻冬舎社長が司会を務めるネットテレビでは、嫌な質問があるはずもなく、嬉しそうにしていたという。

   小池の希望の党がそれほど支持を集めないとすれば、先週の週刊文春の「全選挙区完全予測/自民74減、希望101」はともかく、今週の週刊現代の「自民が54議席減、希望の党84議席、立憲民主党40議席」で、安倍退陣というのがギリギリの線ではないだろうか。

   来週出る週刊誌が挙って安倍政権を根底から揺るがすような大スキャンダルを掘り起こしてくれることを期待しよう。

自民党政策パンフへの疑問

   自宅のポストにやや分厚い「自民党 2017 政策パンフレット」が入っていた。安倍の公約が最初にある。

   お馴染みの北朝鮮の脅威と少子高齢化が2つの国難だという。

   だが、北朝鮮を挑発し「圧力を最大限に高めて」、日本人を金正恩の脅威にさらしているのはトランプ米大統領と安倍首相ではないのか。

   圧力だけで相手を屈服させることが出来ないのは、歴史が証明している。

   また、少子高齢化は今突然始まったことではない。無能な政府や役人が何も手を打ってこなかったから、手の施しようのないところまで来てしまったのである。

   これをどうしたらいいのか、まず政治家と役人たちが知恵を出し合い、こういう策はどうですかと国民に示し、その是非を問うのが筋である。

   もう一ついっておきたい。最後のページに「現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理は堅持しつつ、憲法改正を目指す」とある。

   私は、九条の1項と2項を残し3項を加えて自衛隊を認めるというのは、無理偏に拳骨だと思う。

   どうしてもやりたいのなら、平和主義を捨てると宣言し、国民に信を問うべきである。

NHKが隠していた女性記者の過労死

   ところで、NHKにも過労死問題があったことを、4年も経ってから公表したことが批判を浴びている。

   当然である。電通の過労死自殺を手厚く報じてきたのに、自社のことにはほっかむりでは、報道機関として失格である。

   亡くなっていたのは佐戸未和記者(当時31)。05年に入局し、鹿児島放送局勤務の後、10年からは東京の首都圏放送センターで経済や都庁を担当していたという。

   明るく人望もあったが、亡くなる前には「夜回りがきつい」と友人に話していたそうだ。

   死因はうっ血性の心不全だった。それがなぜこのタイミングだったのか。

   今年、NHKの記者が偶然、佐戸の両親と遭遇したそうだ。その際、両親は娘の死が社内では周知の事実だと思っていたのに、その記者は知らなかった。

   両親は激怒したそうだ。NHKは慌てて公表したが、NHK側のいい分は「遺族の意向」だとしているが、両親側はコメントを発表して、「社内への周知が私達の本意」だといっている。

   自分の所の都合の悪いことは隠して、他社の批判はするというのでは、メディアの看板を下ろしたほうがいい。

   亡くなった自社の記者を大切に思うなら、そうした事実を早く公表し、佐戸記者と交友があった多くの人が彼女の死を悼むことができるようにするのが常識である。

がんの標準治療をやめた南果歩

   夫の渡辺謙がニューヨーク不倫をしていたことを文春砲が報じ、妻である南果歩はどれほど精神的なショックを受けただろう。

   ましてや、南は乳がんに罹り治療中だったのだ。以来、南はこの件についてほとんど語っていない。

   今週の週刊文春には「南果歩 独占告白」とあるから、てっきり夫の浮気についても聞いているだろうと読んで見た。

   まったくそのことには触れていない。先日、南が自分の乳がん治療について語り、「ハーセプチン(抗がん剤の一種)とホルモン剤をストップして、代替療法に切り替えた」という発言が大きな反響を呼んだそうだ。

   それについて縷々話しているが、こちらの下世話な興味には答えてくれていない。

「このハゲーーーっ!」の音声使用料で稼いだ週刊新潮

   日刊大衆(10月7日公開)で、週刊新潮がスクープした「このハゲーーーっ!」という音声の使用料が、フジテレビだけで月1000万円になったと報じている。

   「情報番組やワイドショーでさんざん流れた、今年の流行語大賞有力候補ともいわれる豊田さんの"このハゲーーーーーっ!""違うだろーーーーーーーっ!!"、ミュージカル調の"そんなつもりはなかったんですーーー"といった恫喝音声は、記憶に新しいと思いますが、この音声を1回使用するのに、使用料として5万円プラス税を新潮社に払わなければならないんです。フジは朝の『とくダネ!』から始まり、『ノンストップ!』、『バイキング』、『直撃LIVE グッディ!』の4つの情報番組で、"豊田恫喝音声"を使いまくった。その結果、新潮社への支払いの総額が、月1000万円以上になったということです」(制作会社プロデューサー)

   ということは、他のテレビ局も合わせると相当な「稼ぎ」になったのだろう。老舗の文春砲も多くの動画コンテンツを持っているから、その収入はバカにならない。

   だが、活字週刊誌が動画中心になっていけば、そうした手っ取り早くカネになるコンテンツばかりを追いかけ、地道な取材がなおざりにされないか。

   週刊誌のワイドショー化は、自らの首を絞めることにならないか、心配である。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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