2018年 11月 18日 (日)

党首らは何を語ったか...安倍首相「北朝鮮」、小池氏「希望」、枝野氏「まっとう」

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   総選挙で何が起きていたのか、ビッグデータからひも解いた。党首の街頭演説で発せられた言葉から語られたこと、語られなかったこと。安倍首相の発言から抽出した33万字では「北朝鮮」が目立ち、危機感や不安感をあおって得票に結びつける姿が浮かんだ。

   テキスト・マイニングという分析手法だ。政党のマニュフェストがレストランのメニューなら、党首の演説は店主おすすめの料理に当たる。

   安倍首相の演説は「北朝鮮」が201回と、「日本」の208回についで多かった。「北朝鮮の挑発」「北朝鮮の脅しに屈してはならない」などと、1回の演説で3回以上使うこともあった。関連して「ミサイル」「圧力」「脅威」も持ち出して、安定政権が必要だと強調していた。

   投票日にNHKが実施した出口調査では、回答者27万3000人のうち安倍首相の政権運営を「評価する」は56%だったが、北朝鮮への対応を重視すると答えた人の63%が自民党に、11%が公明党に投票したそうだ。北朝鮮問題が与党の支えになったことは間違いないという数字が出た。ほかには「中小企業」「お金」「就職率」「GDP」ども上位に入り、アベノミクスを強調したこともうかがえた。

   NHK政治部の岩田明子記者は「北朝鮮問題は国民的関心が高く、支持を得やすいと見た。各国首脳との関係もあげていた」という。

   一橋大学の中北浩爾教授は「実績を強調することにつながり、支持を固める効果はあった。この問題で希望の党が足並みをそろえらなかったことも、ダメージを与える効果を狙ったのだろう」と読んだ。

   一方の野党側は、小池百合子都知事が希望の党を、枝野幸男氏が立憲民主党を立ち上げたが、分裂状態で選挙戦に突入した。

   小池さんが最も多く使った言葉は、党名にもある「希望」で、「女性」「情報公開」「消費税」も多かった。「私たちの希望、皆さんの希望をかなえていきましょう」と訴えたが、民進党リベラル議員に対する「排除」発言から人気が下がってしまった。

   枝野さんは「民主主義」「まっとう」が目立った。「まっとうな政治と暮らしを取り戻すために、新しい受け皿が必要です」と呼び掛けて、結党初日の街頭演説では素通りする人もいたが、中盤から多数の聴衆が会場を囲んだ。これをツイッターで発信すると、開設3日でフォロアーが18万人を超えた。

   中北教授は「小池さんは無理をして党を立ち上げた矛盾が排除発言で一気に噴出した。枝野さんは新しいチャンスを見える形で示せた」と解釈する。

   岩田記者は「明暗が分かれた」と評した。「立憲民主党は与党との対決色が鮮明で、安倍批判の受け皿になった。今後の勢力拡大は、幅広い層からの支持が得られるかにかかっている」

語られなかった「憲法」

   争点であるはずなのに語られなかった言葉もある。

   「憲法」は、安倍首相自身が演説で訴えることがほとんどなかった。「国民投票で決めること。街頭演説では時間が限られている」という理由だそうだが、過去の選挙戦であからさまには触れずにきた安保法制や機密保護法を選挙後に強硬成立させる手法と通じる面がある。森友や加計問題にはもちろん、積極的に触れようとはしなかった。

   岩田記者は「来年の通常国会までに改憲案のとりまとめを進めるだろう」と予想しながら「選挙では身近なテーマを訴えるのが得策と考えたと見られます」という。中北教授は「安倍首相が触れるたびに改憲に反対する世論が増す。公明党が野党第一党との合意形成を重視しているし、ハードルはまだ低くない」と受け止めた。その野党第一党の合意は必要ないと、選挙後に安倍首相は早くも言い出している。

   人口密度と演説データを重ねると、消費税への対応で違いがくっきり出た。都市部では重視したという割合が低く、地方で重視の傾向が強かった。小池氏は増税凍結を掲げたが、基盤の都市部で関心が盛り上がらず、希望の党が伸びない一因なった。原発問題は都市、地方の差がなかった。

   中北教授は「政策なき政局の選挙になった。首相の解散権をふくめて考えなければいけない」と受けとめる。

   来月(2017年11月)1日の特別国会召集で政府は調整に入った。形だけではなく野党が求める実質的な審議が行われるかが焦点だと岩田記者はいう。

   選挙を通じて政治に求められたものは何だったのか。

   岩田記者は「財政再建などの主張はほとんど聞かれなかった。国民の判断の基準となる政策をわかりやすく示す努力が必要だ」と注文をつける。

   中北教授は、目立つとわっと集まるが冷めるのも早いポピュリズムを指摘する。希望の党人気がそれだった。「政党を使い捨てにするのはやめた方がいい。われわれが献金やサポーター活動などを通じて政治に参加していくことが必要だ」と、有権者が人任せにしないことを勧める。

   総選挙の総括を演説発言のビッグデータから試みたのはユニークだ。しかし、投票率の問題にまで範囲を広げては25分間ではやや短すぎた。NHKの局内事情はあるにせよ、政治家の発言とその後の行動を追跡するスタイルを貫いて、日にちがたってからもしっかりと検証してほしい。

クローズアップ現代+(2017年10月23日放送「衆院選ビッグデータ徹底分析 ~民意は何を求めたか~」)

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