2018年 7月 17日 (火)

核兵器禁止条約に反対する日本 河野太郎外相に聞く

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   核廃絶を訴えてきた国際NGO「ICAN」(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞した。記念スピーチでは広島で13歳の時に被爆し今はカナダに住むサーロー節子さん(85)が「これを終わりの始まりにしましょう」と強調し、拍手を浴びた。ICANの活動が122の国と地域が参加する核兵器禁止条約の採択につながったのだが、世界唯一の戦争被爆国である日本は加わらず、反対の立場でいる。米国による核の傘に入っているという理由からだ。これでいいのか、日本はどうするべきなのか、河野太郎外相に聞いた。

 

   インタビューから浮かび上がったのは「最小限ポイント」というキーワードだ。核兵器を一定のところまで減らすことで核廃絶に向けた道筋をつける、そのために各国知識人による「賢人会議」を開いたと、外相は言う。

 

   河野外相はICANの受賞について「喜ばしい」と述べた。「核廃絶というゴールを日本政府も共有してきた」としながらも、北朝鮮の核やミサイル開発を懸念する。

   「国民の生命財産をどう守るか、日本は現実のはざまにある。まだ抑止力が必要な世界で核兵器禁止条約に加われば、米国の抑止力を損なうことになる。ゴールは同じだが、アプローチの仕方が違う」

 

   では、具体的に何をするのか。この問いに河野外相は「世界に1万数千発ある核兵器を一定のところまで減らす」という意味で最小限ポイントという言葉を出した。「保有国に働きかけてなるべく減らし、査察の枠組を作れれば、核廃絶の方向がつく」との考え方だ。

 

   核廃絶の議論が始まったのは2013年、非人道性を話し合う国際会議からだ。当初は日本政府も被爆者とともに積極的に参加していたのだが、翌年から流れが変わった。禁止条約を早急に作ろうという動きが広がり、外務省は態度を決められなくなった。

 

   米国の意向を重視なければという、日本外交につきものの理由からだ。米国から直接の圧力があったのか、それとも日本の役人お得意の忖度(そんたく)でおもんばかったのかはわからないが、とにかくぐずぐずし始めた。

 

   2015年の非公開資料には、日本代表が「最終段階で核禁止条約の導入を検討する余地がある」と発言し、日本同様に米国の核の傘に入るドイツやカナダからも同調の声が続いた。一方の米国は各国に条約反対を求める圧力をがぜん強めた。

 

   日本は今年(2017年)3月に国連で始まった交渉会議に、不参加を決めた。誰もいない日本代表の席に「ここにいてほしかった」と書かれた折り鶴がぽつんと置かれていた。

賢人会議で新アプローチ

 

   なんだか恥ずかしい話だが、日本政府は今、新しいアプローチを始めている。11月に世界各国の専門家16人を集めていた賢人会議がそれだ。米ロ中などの核保有国、核の傘にあるドイツやオーストラリア、核兵器禁止条約を推進するニュージーランドやエジプトなど各国からの顔ぶれをそろえた。

 

   非公開の会議では、核兵器禁止条約の必要を訴える賛成派と、北朝鮮を除けば新たな核開発はないという保有国側が2日間にわたって12時間の議論を戦わせた。「廃絶の期限を決めなければ現状肯定と同じ」という意見もあったという。

 

   河野外相は「来春には議論をまとめて、日本としてインプット(提出)していきたい」と意欲を語る。そうはいっても「米国寄りと見られる現実の中で、核保有国と非核保有国の橋渡しができるのですか」と、武田真一キャスターが現実問題を問う。

 

   外相は「核を持つ国が核兵器をなくさなければ進まない」という、こちらも現実を強調した。「核抑止を最小限ポイントに向けて議論していく中で、最終的には核をなくす方向に」「核廃絶に向けて、人類としてコミット(かかわり)しなければならない。国を超え、世代を超えて、核兵器禁止条約がみんなを奮い立たせた意義は大きい。市民と政府、ちがった役割から努力してゴールにたどり着きたい」というのだ。

 

   核廃絶という「ゴール」に向かう意義を自民党進歩派ともハト派ともいわれる外相は強調したのだが、彼が属する自民党にはゴリゴリのタカ派もいる。この考えをイコール安倍内閣の考えと受け取っていいのかにも、どうも不安がつきまとう。

 

   自民党内からは「河野さんはああ言うけどなあ」といった声が聞こえてきそうだ。現に、核兵器禁止条約に日本が不参加の状態は変わらない。

 

   こんな日本がさあ何をできるか、政府肝いりの賢人会議がどこまで有効なのかが問われ続ける。

*クローズアップ現代+(2017年12月11日放送「"核廃絶"分断を越えて ~ノーベル平和賞 そして日本は~」)

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