2018年 10月 17日 (水)

入院させたら認知症悪化!ベットに縛りつけられ心身とも衰弱

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   認知症患者をベッドなどに縛る身体拘束が増えている。とくに精神科病院では10年で倍増し、1日に1万件を超えるという。患者数の増加と安全のためというが、拘束が患者の病状を悪化させることも多い。

   2年前に認知症を発症した70代の男性は、夜間に排尿したり大声をあげたりの「夜間せん妄」があったため、息子は介護施設ではなく精神科病院に入院させた。4週間で退院したが、衰弱して要介護度は入院前の2から5に悪化していた。認知症専門医に診てもらったところ、拘束に加え、薬の処方にも問題があった。興奮させる薬と抑える薬を出す、いわゆる「パニック処方」だった。入院中に病院からは「拘束する」という連絡がきていた。

   精神科での身体拘束には法律の基準がある。自殺・自傷の恐れが切迫している、多動・不穏が顕著、患者の生命に危険が及ぶ恐れなどで、代替手段がない場合となっている。

   青森・弘前市の藤代健生病院はできるだけ縛らない。それでも認知症の症状が重い場合は、拘束せざるをえないという。夜間は看護師2人で58人を看る。取材中にも、部屋を間違えたり、廊下で倒れたりが起こっていた。けがをする可能性は常にある。看護師は「ごめんよ」と言いながら縛る。「少ない人数だと、やむをえない」

   5年間で拘束を3割以上減らしたが、関谷修院長は「今後、もっとたくさんの認知症の方が来られるでしょう。今の私たちの体力で対応できるかどうかです」と話す。

食事・洗面・トイレ以外は24時間身体拘束

   山梨学院大学の竹端寛教授は「悪循環になっているんです。患者は縛られたくない、嫌だと訴えても聞いてもらえない。そこで暴言、暴力になる。その症状だけを見て拘束する。結果だけを見て原因を見ていないから、断ち切れないんです」という。

   トラブルも起こる。都内の50代の女性は躁状態で入院した。1週間後、突然心肺停止になり死亡した。原因は血栓が詰まる「エコノミークラス症候群」だった。解剖の結果、肺動脈や両足に血栓が見つかった。家族はカルテを取り寄せて驚いた。女性は食事、洗面、トイレを除いて、胴と両手を1日中拘束されていた。血栓の存在を示す値は、入院当初の「1.11」から心配停止後は「292.10」になっていた。家族は長時間の拘束で血栓ができたのではないかと疑っている。

   NHKの取材に病院は「医師は法に基づいて拘束が必要と判断した。死亡との因果関係は医学的に明らかでない」と回答した。千葉大病院精神科医の上野秀樹さんは「基準には『患者の生命に危険が及ぶ』という曖昧なものがあります。医師の恣意的な判断が入り込む余地があり、家族が納得できないケースもあります」という。

都立松沢病院「患者を制圧するような治療はプロじゃない」

   東京都立松沢病院は身体拘束の削減で効果を上げている。かつて1日に149人を拘束していたが、6年間で9割減らした。病棟によってはゼロ。斎藤正彦院長は「人の精神をケアするプロなんだから、力で患者を制圧するような治療手段を持たないほうがいいんです。患者を人として、きちんと対応することですね」と語った。

   松沢病院ではスタッフは徹底的に患者と向き合う。70代の認知症の男性は鼻につけられた栄養チューブを引き抜こうとした。以前なら手を拘束されたが、看護師は栄養チューブをなくし、家族に好みを聞いた食事を口から食べさせている。

   転倒の恐れのある患者の部屋には、壁から床までスポンジやクッションを敷き詰め、家族にもけがのリスクを説明したうえで「拘束しない」という同意書をとる。自殺を図るような患者でも、拘束をなくせないかと模索を続ける。

   竹端教授「素晴らしい。全国に広がってほしい。でも、精神病院の中だけでなく、認知症になっても病院に入らなくてもいい仕組みこそ作っていく必要があるんです」

   放送中、医療関係者からの声が届いた。「暴れ回る人を拘束なしでどうやって対処するのか」「看護師は常に命の危険を感じている」「向き合いたくても時間がない」という。

   7年後には認知症が700万人という。

NHKクローズアップ現代+(2018年1月11日放送「認知症でしばられる!?~急増・病院での身体拘束~」)

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