2019年 2月 16日 (土)

<万引き家族>
寄り添い支えあってこそ家族・・・ありのままの自分を受け入れてもらえる幸せ

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(C)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
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   東京・下町のボロ家に柴田治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太、信代の妹・亜紀、そして祖母・初枝が暮らしていた。彼らの暮らしは主に初枝の年金に頼り、足りないぶんは治と祥太が万引きをして賄う。部屋は常に物が散乱し、見るからに低所得者層の暮らしぶりであるが、なぜかいつも5人の間には笑いが絶えない。

   真冬のある夜、治と祥太は万引きの帰りに、団地の廊下に幼い女の子が閉め出されて凍えているのを見つけ、家に連れて帰る。身体中が傷だらけの少女を見て、その境遇を察しつつも、治と信代は一度は少女を返しに行くが、部屋の前まで行くと、少女の両親が大声で罵り合っている声が聞こえてくる。「産みたくて産んだわけじゃない」と叫ぶ母親の声に、信代は少女を再び連れて帰り、家族として迎え入れることにする。

放り出され寄る辺なく漂う「真逆の弱者」

   人が捨てたものを拾い、また拾いを繰り返してできあがった「万引き家族」。彼らはいずれも社会から捨てられた弱者であり、お互いを拾い合って築き上げた家族だった。治は工事現場で日雇い労働、信代はクリーニング店でパート、亜紀は風俗店で働くが、いっこうに暮らしは豊かにならない。治は怪我をし、信代はリストラされ、収入源はどんどん減っていく。だから子ども二人も万引きに手を染めるしか生きていくすべがない。

   また一方で、虐待を繰り返す親、風俗しか行き場のない青年、世間体を気にして嘘を重ね続ける裕福層家庭など、互いに繋がることができず、寄る辺のない大海に放り出されてしまったような、また別種の弱者の存在にもしっかりスポットが当てられていたのも印象的で、フィクションとはいえ、現代の日本社会の負の実情に忠実にリンクしたシーンの連続に一瞬も目をそらすことができなかった。

生きていく力育めない現代ニッポン

   いびつで滑稽な万引き家族だが、血縁の親兄弟からでなくとも、ありのままの自分を受け止めてもらい、肯定されて生きてこられた彼らは強い。たとえ家族という形態が崩壊したとしても、それぞれの道で生き抜こうという揺るぎない力が、彼らにはすでに備わっている。

   考えてみれば、そのような人生でもっとも必要な力が、いったいどれだけの血縁家族の中できちんと育まれているのだろう。彼らこそが家族として「本当」なのではないか。ラストシーンの受け止め方は観た人それぞれだろうが、彼らのその後の人生は決して悲観すべきものではないように感じた。

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