2019年 11月 21日 (木)

統計不正の当事者が語る「隠ぺい」と「虚偽報告」の連鎖 森友・加計疑惑と同じように逃げ切られてしまうのか

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   景気動向や経済政策の指標となる重要な統計が歪められていた厚生労働省の統計不正問題。雇用保険や労災給付金の減額につながり、GDPをはじめ日本の姿を映す数値や賃上げにまで影響する。こんなにいい加減なことがどうして起こったのか。現場の担当者が内幕を語った。

   厚生労働省がまとめる毎月勤労統計の不正は2004年に始まった。本来は500人以上の事業所すべてを対象に調べるはずが、東京都内は3分の1しか調査せず、必要な係数処理もやっていなかった。当時の担当課長は重大とは思わずに決裁し、後任の課長にも引き継がなかった。いま不正発覚を知り「驚いた。フェイクニュースかと思ったぐらいだ。まさに私に監督責任があった」と語る。ここから5人目の課長まで、この状態が続いていた。

最初の課長「驚いた。フェイクニュースかと思った」

   6人目で気づいた。しかし、実態である「抽出調査」の文言は入れられなかったというから、「隠ぺい」と批判されてもしかたがない。外部有識者会議でも「全数調査」のウソがまかり通っていた。この点を取材された元課長は「特別監察委員会の調査を受けているので話せることはない」という。真相追及のための調査が隠れ蓑に使われている。

   7人目の課長は、前任者からの引継ぎで不正を知らされていた。彼は不正をルールにそって正すことよりも、ルールを実態に合わせることを考えた。「全数調査」の前に「原則として」と入れようとした。これは「なんで変えるのかと総務省から聞かれるのを恐れて断念した」と、当時の担当者は話す。

   ウソの上塗りはしなかったが、不正そのものは気づいていたのに正さず、ぐずぐずと繰り返された。虚偽報告がここでも続いた。前例踏襲と事なかれ主義。組織が完全に機能不全の状態だった。当時の職員は「国民の顔は思い浮かばなかった。恥ずかしく申し訳ない」と振り返った。

   こうして、統計数値を反映する雇用保険や労災補償は10年以上、過少支給が続き、2000万人に影響した。半数の1000万人はいまだに特定されていない。

   直接の被害だけでなく、国そのものへの信頼も揺るがしかねない。不正は厚生労働省にとどまらず、7省庁の23統計に及ぶ。大和総研エコノミストの小林俊介氏は「投資に根拠のない状態になり、投資家や企業に疑問を抱かせる」と、日本経済への投資意欲の減退を指摘する。

安倍首相「私からはなんら指示をしていない」

   もう一つ、意図的な数字のごまかしがなかったのかという問題もある。毎月勤労統計は2015年に調査対象の事業所を入れ替えたが、同年3月に当時の総理大臣秘書官が厚生労働省から事前説明を受け、「問題意識」を伝えていたというのだ。

   「賃金に関する数値が高く出るように求めたのではないか」「すなわち、アベノミクスがうまくいっているように見せかけようとしたのではないか」という疑問が野党から出ている。

   「官邸主導の演出だ」という野党の追及に、安倍首相は「私からはなんら指示をしていない」と反論して平行線。当の元秘書官は「個人として考えだった」と強調し、野党は「示し合わせているように聞こえる」と猛反発する。官邸の圧力や官僚の忖度の言葉がちらつくうちに、与党内からは「こればかりをひきずって、ほかの問題を議論しなくていいのか」の声が持ち上がる。なにやら森友・加計疑惑と似たような構図になりはじめた。

   厚生労働省の特別監察委員会も当初はわずか1週間で調査を終え、しかも聞き取りを職員に丸投げしたり、幹部が同席したりというありさまだった。内輪で早く幕引きをしたかったのだ。政府与党が選挙への影響を恐れるたびに幕引き圧力が高まる。

   「行政の信頼回復に取り組まないといけない」(NHK社会部の松尾恵輔記者)、「本当に国民に向いているのか疑問だ。一刻も早く改善を」(武田真一キャスター)との声はあがるが、政府が現場の新旧担当者に「個人の責任」を語らせて逃げ切る展開までが踏襲されかねない。今そういう危険の真っただ中に、この統計不正問題はある。

NHKクローズアップ現代+(2019年2月18日放送「徹底検証 統計不正」)2019年2月18日(月)

文   あっちゃん
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