<なつぞら>(第42話・5月18日土曜放送)
「俺はここで帰るのを待たんよ」天陽はなつに精一杯の気持ちを伝えた・・・それが二人の別れだった
なつ(広瀬すず)はとうとう家族に「自分の夢を追うために東京に行きたい」という本当の気持ちを打ち明けることができた。泰樹(草刈正雄)からも認められ、喜ぶなつは軽やかにスキーを走らせ、天陽(吉沢亮)に会いに行った。
天陽の胸に飛び込んだなつは「許してくれた。じいちゃんが認めてくれた」と報告する。「天陽くんのおかげだわ。よかったあ」とはしゃぐなつに、天陽は「よかったな、なっちゃん」といつもと変わらぬさわやかな調子で答えた。「北海道にきて、天陽くんに出会えてよかった」と無邪気に言うなつは、それが天陽との別れを意味することに気付いていない。
天陽の父・正治(戸次重幸)は、なつが天陽の兄・陽平(犬飼貴丈)と同じアニメーションの世界を目指していることを知り、「東京に行っても、なっちゃんとは陽平でつながっているんだな」と言う。天陽の母・タミ(小林綾子)は、息子のなつへの気持ちを推し量ってしまう。
「俺となっちゃんは広いキャンバスの中でつながっている」
十勝も3月となって、雪の積もる中で卒業式を終え、クラスメートや演劇部の仲間たちと別れを惜しむと、なつは天陽のアトリエを訪れた。天陽に生まれたばかりの仔牛の初乳の飲ませ方を教えた後、家路に付こうとすると、「なっちゃん!」と天陽は体ごとぶつかってきて、雪の上になつを押し倒した。
「どうしたの?」と驚くなつに、天陽は告げた。「おれは待たんよ、なっちゃんのこと。ここで、帰るのは待たない」。息がかかりそうな近さで、なつを見つめる天陽のまなざしは強い。
気持ちを振り切るように起き上がり、天陽は言った。「なっちゃん、俺にとっての広い世界はべニア板だ。そこが俺のキャンバスだ。何もないキャンバスは広すぎて、そこに向かっていると、自分の無力ばかり感じる。けど、そこで生きている自分の価値は、ほかのどんな価値にも流されない。なっちゃんも道に迷った時は、自分のキャンバスだけに向かえばいい。そしたらどこにいたって俺となっちゃんは何もない、広いキャンバスの中でつながっている」
真剣に聞き入るなつに、天陽は右手を差し出す。「頑張ってこい、なっちゃん」。その右手をなつは強く握り返した。(NHK総合あさ8時放送)