2019年 12月 10日 (火)

LGBTをもっと知ろう!企業や学校が積極的取り組み―偏見や差別はだれも幸せにしない

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   同性愛や心と体の性が一致しないトランスジェンダーなどのLGBTの人たちの割合は8.9%という。左利きの人の割合と同じくらいだ。しかし、男はこうあるべき、女はこうあるべきといった「バイアス」が社会に根付き、LGBTの人たちは生きづらさを感じている。

   それをどう取り払い、生きやすい社会を作れるのか? 世界ではLGBTに対する意識が大きく変わろうとしている。WHO(世界保健機関)は先月(2019年5月)、精神障害としてきた「性同一性障害」を傷害の分類から外した。

女性の視線が気にならない女子更衣室に改装

   LGBTの人たちが働くための支援をしているLBGTキャリアアドバイザーの北川わかとさんは、自らもトランスジェンダーだ。女性として生まれたが、26歳の時に性別適合手術を受け、今は男性として暮らしている。

   LGBTの人たちの仕事の悩みを聞きながら、企業側の理解を深めるコンサルタントをしている北川さんは、大阪で老人ホームを運営している社会福祉法人「慶生会」を訪れた。この施設では、以前、周囲の目を気にしたトランスジェンダーの職員が退職した。「働きにくいから退職するという人材の流出を防ぎたい」と考え、対応を急いでいる。

   北川さんが最初に調べたのは、女子更衣室だった。「体が女性で心が男性は、女性の中で着替えるのは苦痛に感じる」と、見られずに着替えられるスペースを作ることを提案した。廊下に貼られた職員のフルネーム付きの顔写真もやめたほうがいいと言う。外見は男性らしくても、名前が女性のままということがあるからだ。

   この施設のような、LGBTの人たちが働きやすい環境を整えようとする企業が増えている。5月に都内で「LGBTに理解ある企業」を認定するための説明会が開かれ、60社以上が参加した。偏見をなくし、社員の多様性を認めていくことが成長には欠かせない、という意識が広がり始めている。

   北川わかとさんは「私が悩んでいた10年前と比べて、情報が増え、取り組みも進んできましたが、実際にはまだまだ」と話す。たとえば、就職活動の際の履歴書。見た目と実際の性別が異なっていると、トランスジェンダーの人は応募をためらってしまう。服を脱がなくてはならない健康診断、同性のパートナーには社宅や家族手当が提供されない、カミングアウトしたことを口外してしまう「アウティング」など、課題は尽きない。

   もう1人のゲストのアクサ生命保険社長の安渕聖司さんは「そもそも社会は多様であるというのが前提です。それを受け入れて育てて、イノベーションが生まれる」という。アクサ生命はLGBTのパレードにも参加しており、履歴書に写真や性別は必要ないという。

「男子はかくあるべし」という決まり変更した男子校

   同性愛に対する世代別の寛容度を調査したデータによると、日本では年代が下がるほど寛容度が高くなる。男女別学の自由学園男子部には、2年前に作られた「性の自分らしさを考える自由の会」という生徒たちのグループがある。中心メンバーの木村翠さんがこの活動を始めたきっかけは、友達からLGBTを打ち明けられたときに、自分が持っていた偏見に気づかされたからだった。

   グループは月に数回集まり、LGBTについて議論したり、勉強会を開いたりしている。そして「男子はこうあるべき」という学校の決まりを次々に変えていった。伝統だった坊主頭についても全校で話し合う場を作り、髪形を自由にした。体操時の上半身裸という習慣も、シャツを着ることができるように変えた。男子部校長の更科幸一氏によると、男女別学をやめて共学にすることを検討するようになっている。

   世界各国の同性愛に対する寛容度調査(10点に近いほど寛容度が高い)で日本は5.14、LGBT先進国のスウェーデンは8.18。スウェーデンはどのように国民の意識を変えたのか。

   首都ストックホルムには、至る所にLGBTに理解を示すレインボーフラッグが掲げられている。スウェーデンでは1980年代からLGBTの権利の拡大を求める運動が盛んになった。しかし、保守派の反発は強く、運動の支持者が襲われる事件が起きたこともあった。

   転機となったのは、2000年代に入り、国が同性愛差別を禁止するなどの法整備を始めたことだった。リンドハーゲン男女平等担当相は「経済が低迷し、高齢化が進むなか、国として成長するためには多様な人材の活躍が欠かせないと考えました」と語る。

   スウェーデンがまず力を入れたのは幼児教育だ。偏見が生まれないように、国がカリキュラムを作っていて、ニコライゴーデン幼稚園では読み聞かせする絵本も、男性カップルが子育てをするお話だった。次第に、企業や公共交通機関、教会も理解を示すようになり、LGBTの高齢者への配慮も行き届いている。

   寛容な社会を作るために、いま日本が求められているのは「あたりまえに混ざる」ことだと安渕さんいう。「社会はそもそも多様で、みんなそれぞれ違うんです。変わらなければならないのは、多数派なんです。まだ無関心が多く、まずはLGBT当事者の話を聞くことからスタートだと思います」と話す。

   北川さんは「相手を知ることから始める」として、「カミングアウトされたら、あなたのこともっと教えてくれという気持ちでしっかり聞いてあげてほしい。LGBTの人は皆さんの近くにいるんだということを知っていただくことが必要です」と話す。

   武田真一キャスター「自分は関係ないと思っている人から変わっていかないといけないと思います」

   *NHKクローズアップ現代+(2019年6月11日放送「"性の偏見"取り払えますか?~LGBTに寛容な社会のために~」)

文   バルバス
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