2019年 7月 19日 (金)

ダムが水害を引き起こす?想定超える豪雨で緊急放流―下流の街や村を濁流が直撃

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   水害から街や村を守るはずのダムが、逆に氾濫の引き金になるケースが増えている。愛媛県西予市の肱川上流の野村ダムは、昨年7月(2018年)の西日本豪雨で緊急放流を行い、下流の氾濫で5人の犠牲者を出した。

   前日から雨が降り続き、野村ダムの川西浩二所長はダム容量を確保するため、毎秒300トンの事前放流を決めた。その後、雨は激しさを増し、放水しても貯水量は満水時の9割を超え、あふれ出す危険が強まった。川西所長は「緊急放流は避けられない」と判断したが、暗闇での住民避難を心配して、放流はすぐには行われなかった。

   野村ダムから西予市に緊急放流の連絡が届いたのは明け方近くで、直ちに避難指示が出されたが、連絡が遅れたうえ、大雨のピークと重なって逃げ遅れる人が相次いだ。

管理事務所と自治体が責任なすり合い

   治水が専門の京都大の今本博健・名誉教授は「事前放流を毎秒300トンではなく、500トンに増やしておけば、理論上、ダムの水位の上昇スピードを抑え緊急放流を2時間遅らせ、住民避難が進んだはずだ」という。野村ダム管理事務所はそうできない理由があった。1995年7月の大雨では毎秒500トンの事前放流を行い、下流の堤防のない所で氾濫して1200戸が浸水被害を受けたのだ。以来、事前放流は毎秒300トンに抑えることになった。

   堤防が十分でないなら、避難指示は事前放流の段階で出すべきではなかったのか。作家の石井光太氏は「行政の縦割りに問題がある」とリポートした。「なぜきちんと避難指示が出せなかったのか聞くと、ダム管理事務所は『自治体の問題』と言い、自治体は『緊急放流はダム側の話だから』というんです。ダムをつくったからには、国や自治体が一つになって住民を守る意識が必要だし、欠かせないと思います」

電力会社は逃げ「ダムは発電が目的で治水の義務ない」

   西日本豪雨で岡山県倉敷市真備町に甚大な被害をもたらした高梁川上流にある新成羽川ダムでは、放流をめぐって住民と中国電力の間で激しい論争が起きた。新成羽川ダムは最大毎秒2074トンを放流し、被害の原因となった可能性が指摘されている。6月(2019年)に開かれた防災対策で、住民は「ダムが事前放流を行っていれば、下流に流れる水量を抑えられ避難する時間も稼げた」と訴えた。

   これに対し、中国電力は「そもそも、ダムは発電や工業用水が目的で、治水対策は義務付けられていない」と反論したが、最後は折れ、事前放流を実施することを決めた。

   戦後、多くの水系で造られたダムが、気候変動で見直しが迫られている。石井氏は「ダムは安全神話の中で、放ったらかしになってきました。ダムの川沿いに住む住民や自治体、国が一つになって何が危険なのか、直すべきところはどこか、住民はどういう意識を持つべきか。一つひとつ明らかにする時が来ていると思います」と訴えた。

   近年お豪雨はダム建設時の想定をはるかに超えているということだろう。

NHKクローズアップ現代+(2019年7月10日放送「豪雨被害を拡大!?あなたの町のダムは安全か」)

文   モンブラン
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