2024年 5月 7日 (火)

「鎌倉殿の13人」 源氏の血を引く阿野時元の挙兵 「謀反」は本気だった?濡れ衣?
<歴史好きYouTuberの視点>

   NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の12月4日(2022年)放送回は「第46回 将軍になった女」でした。登録者数13万人を超える人気歴史解説動画「戦国BANASHI」を運営するミスター武士道が、「第46回」の解説動画で最も熱く語りたかった「ツボ」は?

   動画内容を軸に再解説します。次回放送をより楽しむための準備・復習にもお役立てください。(ネタバレあり)

  • 歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第46回」解説動画より
    歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第46回」解説動画より
  • 歴史解説YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」 鎌倉殿の13人「第46回」解説動画より

ドラマでは時元の母・実衣がそそのかされて...

   いや~乱世乱世。どうも、歴史好きYouTuberのミスター武士道です。今回も大河ドラマの内容に合わせて、歴史的な解説をしていきます。

   鎌倉殿の13人第46回『将軍になった女』では、実朝亡き後の幕府の混乱を治めるため、政子が「尼将軍」になるまでが描かれました。

   次の鎌倉殿を決めるため、北条義時と後鳥羽上皇の駆け引きが展開されるなか、源氏の血を引く阿野時元が鎌倉殿の座を狙って立ち上がります。

   ドラマでは、時元の母・実衣が三浦義村にそそのかされて、時元を煽り、しかも三浦義村は裏で北条義時と繋がっていた......という恐ろしい展開でしたが、記録上はどうだったのでしょうか。

   阿野時元の挙兵について、『吾妻鏡』には詳しいことが記されていません。

   時元は、宣旨(天皇からの命令文)を賜って、東国を支配しようと企てたものの、 すぐに北条義時が、金窪行親ら御家人を派遣して、鎮圧されました。実朝暗殺からひと月も立たない建保七年(1219)二月二十三日、時元は追討軍に包囲され自害します。

   あまりにあっさりとした吾妻鏡上の阿野時元の乱ですが、この事件に至るまでの過程や、時元の母・阿波局(ドラマでは実衣)についても一切記録が無いのです。

   混乱する情勢の中で、身の危険を感じた時元が軍備を整えていたところを、謀反の疑いをかけられ誅殺されたのではないか、とする研究者もいます。

   時元の父、阿野全成にも謀反の疑いがかかり処刑されていますが、同じように詳しい事情がわかっていません。頼朝の甥という源氏の血が、北条に危険視されていた可能性はあります。

   ドラマでは描かれませんでしたが、同じように源氏の血を引く禅暁(公暁の弟)も、北条義時の命によって殺害されています。

耳鼻削ぎの刑罰

    記録にはありませんが、ドラマでは阿野時元が自害した後、時元の母・実衣にも嫌疑がかけられ、その処罰を巡って北条一族が言い争うシーンがありました。

   その中で、執権・義時は、身内だからこそ厳罰に処すべきと主張し、「耳と鼻を削いで流罪にする」という恐ろしい提案が上がりました。

   そんな恐ろしい提案をすぐに思いつく大江(広元)殿や、それを採用しようとする義時はとんでもない人でなしだと思った視聴者の方も多かったのではないでしょうか。

   しかし、中世において耳鼻削ぎの刑罰は、決して珍しい刑罰ではなかったようです。鎌倉殿の13人の中でも、政子の後妻打ちに協力した牧宗親(りくの兄)が髻(もとど り)を切られるという罰がありました。

   あれは、宗親への罰が、死刑では重すぎるが、それに準ずる重い罰を与えなくてはならないということで、行われたものです。武士にとって、髻が無いというのはまさに「生き恥じ」でした。しかし、女性には髻がないため、死罪に準じる刑罰として、耳鼻削ぎが行われていたようです。

   残酷すぎる刑罰に思えますが、当時の人たちにとっては「死ぬよりはマシ」だろうくらいに思われていたのです。もちろん、耳や鼻を削がれるのは嫌だったとは思いますが ......

   現代人の感覚では理解しがたい常識が中世にはあったのです。

   さて、今回の記事はここまで。ドラマに関するさらに詳しい解説は、是非YouTubeチャンネ ル・戦国BANASHIをご覧ください。それではまた来週もお会いしましょう。さらばじゃ!

   (追記:参考文献など)今回の参考文献は、『史伝 北条義時 武家政権を確立した権力者の実像』(山本みなみ著、小学館)や『源氏将軍断絶 なぜ頼朝の血は三代で途絶えたか』(坂井孝一著、PHP新書)など。エビデンスには細心の注意を払っておりますが、筆者は一歴史好きYouTuberであり、歴史学者・研究者ではございません。もし、間違い指摘やご意見などございましたら、この記事や動画のコメント欄で教えて頂ければ幸いです。

   <第46回解説動画は、(J-CAST)テレビウォッチのオリジナル記事下動画や、YouTubeチャンネル「戦国BANASHI」からお楽しみください>


++ 「ミスター武士道」プロフィール
1990年、三重県四日市市生まれ。年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。
一般向け歴史書籍の監修、市や県などの依頼を受けて、地域の歴史をPRする動画制作なども手掛ける。2019年に歴史解説チャンネル「戦国BANASI」を開設。2022年冬には登録者数が13万人を突破した。

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