枝川二郎の「マネーの虎」
サブプライム問題のウソ・ホント(5)日本の銀行が欧米より「被害」が少なかった理由 

2008/7/14 11:52

   日本の銀行は米国のサブプライム問題を何とか乗り切った。その影響は銀行によって濃淡があるが、少なくとも全体としては欧米の銀行よりずっとうまくしのげた。なぜだろうか?

欧米の「狩猟民族」には不利だった

   サブプライムの「痛み」の大きさは、アメリカで手広く業務を行っていたかどうか、でちがう。ヨーロッパの金融機関は、アメリカの金融機関に劣らぬ積極性でサブプライムに入り込んでいたが、日本の大手銀行は一部を除いて本格的に取り組まなかった。これは、日本の銀行がサブプライム・ローンのリスクを事前に察知して参入をひかえた、というわけではもちろんない。彼らがたまたま「内弁慶」であったため被害を受けなかった、だけだ。

   というのも日本の国内市場がそれなりに大きいため、無理に海外に進出しなくてもよかったし、そもそも文化や言葉の面で国際化が苦手だったからだ。それに比べると、たとえばスイスのUBSのような銀行は良かれ悪しかれグローバル・プレーヤーとして生きていくしか道がないから、積極的に関わっていった。

   次に、リスクの大きい取引に対する態度のちがいがある。欧米の投資銀行の社員は、運用がうまくいけば多額の成功報酬が得られる。そのため、収益最大化のためにはどうしてもリスクの高い取引に傾斜しがちだ。いわば狩猟民族的スタイルである。

   一方、日本の多くの銀行員は収益を最大化する、というよりは「社会の公器としての銀行」というプライドを優先する。これではリスクの高い取引をするインセンティブは限られるし、高度な金融技術を駆使する、といった状況にはなりにくい。これは農耕民族的メンタリティといってよいだろう。現在のような厳しい市場環境は結果として狩猟民族より農耕民族に有利に働いた、といえる。

(続く)

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