2024年 3月 29日 (金)

「東洋のガラパゴス」に北米産トカゲがウヨウヨ 小笠原諸島「世界遺産」の前途多難

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   小笠原諸島(東京都小笠原村)が2011年6月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会で世界自然遺産に決まった。日本では白神山地(青森、秋田県)、屋久島(鹿児島県)、知床(北海道)に続き4か所目だ。

   都心から約1000キロ南の太平洋上にある小笠原諸島は、世界的にも貴重な動植物が多い。それだけに今回の自然遺産登録決定では自然保護のさらなる徹底が求められている。長年、空港建設問題でもめているが、観光開発はどうなるのだろうか。

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   小笠原諸島は南北約400キロに及ぶ大小30の島々で構成される。登録地は、父島、母島の居住地域や自衛隊基地がある硫黄島などを除き、陸域、海域を合わせて7940ヘクタール。

   大陸と地続きになったことのない「海洋島」で、ダーウィンの進化論の舞台となったガラパゴス諸島(エクアドル)と共通することから、動植物が独自の進化を遂げ、「進化の実験場」「東洋のガラパゴス」と呼ばれる。小笠原でしか見られない固有種は、植物441種中161種(36%)、昆虫1380種中379種(27%)にのぼる。なかでもユネスコが、貴重さを示す具体例として高く評価したのがカタツムリの仲間、陸産貝類で、106種のうち100種(94%)が固有種で、面積が約100倍のガラパゴスより種数が多く、絶滅率は22%と低い。

   登録に当たり、ユネスコからは「外来種対策の継続」「注意深い観光管理」が強く求められた。

   小笠原諸島は、これまでの国内の自然遺産とは大きく異なる歴史を持つ。約180年前のハワイや日本からの入植以降、捕鯨船や遠洋航路などの寄港地にもなり、人や物の往来で諸外国からさまざまな動植物が持ち込まれ、本来の小笠原の生態系は危機に直面しているのだ。

   例えば北米原産のトカゲ「グリーンアノール」は父島と母島で数百万匹が生息していると推測され、オガサワライトトンボやオガサワラシジミといった固有の希少昆虫を食い荒らす。環境省などは2006年から粘着シートやネットを使ったわなでの捕獲に取り組む。家畜やペットとして持ち込まれ、野生化したヤギやネコなどによる食害も深刻だ。

   生態系に組み込まれた外来種はやみくもに駆除すれば済むという単純な話ではない。弟島ではカタツムリを食べる野生化したブタの駆除を進めたところ、ブタが好む外来種のウシガエルが増えて固有種のトンボの絶滅懸念が浮上した。

   こうした問題も考慮しながら、外来種対策が練られているが、その大きな柱が外来種持ち込みを水際で防ぐための検疫。島に入ると、所々に柵や、「靴底のドロ落とし」を呼びかける看板などが設けられている。父島の絶滅危惧種「アカガシラカラスバト」保護地域では、2003年から観察用の指定ルートが整備され、保護とエコツアーの両立の取り組みが進むが、入り口では粘着テープつきのローラーで服についた外部の草木の種を取ることを義務付けている。

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