2024年 4月 23日 (火)

ボコボコ朝日新聞が抱えた新たな難問 「吉田調書」誤報取り消しに弁護士ら異議

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   いわゆる「吉田調書」の問題をめぐり、朝日新聞が新たな対応を迫られることになりそうだ。朝日新聞は、2014年5月20日に1面トップで「所長命令に違反 原発撤退」と題して掲載した初報が誤報だったとして取り消したが、弁護士の有志が「記事全体を取り消さなければならない誤報はなかった」とする申し入れ書を9月26日に朝日新聞側に提出し、関係者を処分しないように求めたからだ。

   だが、申し入れ書と朝日新聞が会見で説明した内容とではかみ合っていない部分もあり、認識の隔たりが際立つ結果になっている。

   申し入れ書は、木村伊量(ただかず)社長と、誤報の検証を進める第三者機関「報道と人権委員会(PRC)」宛て。狭山事件再審請求運動で知られる中山武敏弁護士を筆頭に、梓澤和幸弁護士、宇都宮健児弁護士、海渡雄一弁護士ら9人が連名で提出した。9人以外にも、全国の弁護士191人が賛同している。

「『命令違反で撤退』したかどうかは解釈・評価の問題」

朝日新聞は9月11日の会見で「吉田調書」報道の初報を取り消すことを発表した
朝日新聞は9月11日の会見で「吉田調書」報道の初報を取り消すことを発表した

   申し入れ書では、

「『命令違反で撤退』したかどうかは解釈・評価の問題です。吉田所長が所員に福島第一の近辺に退避して次の指示を待てと言ったのに、約650人の社員が10キロメートル南の福島第二原発に撤退したとの記事は外形的事実において大枠で一致しています。同記事全部を取り消すと全ての事実があたかも存在しなかったものとなると思料します」
「記事全体を取り消さなければならない誤報はなかったと思料します」

などと指摘している。

   だが、この指摘と朝日新聞側の説明とは、必ずしもかみ合っているとは言えない。例えば9月11日の記者会見では、「事実の誤りを認めたのか、評価の誤りを認めたのか」という記者の質問に対して、杉浦信之取締役(編集担当)=解職=が「事実」に誤りがあったと明言。外形的に命令はあったが、それが所員に伝わっていなかった点を把握できていなかったと説明した。記事全体を取り消した理由についても、取り消した「所長命令に違反 原発撤退」という見出しが「記事の根幹部分」にあたる以上、記事全体を取り消さざるを得ないと説明していた。

   申し入れ書では、

「貴紙報道は政府が隠していた吉田調書を広く社会に明らかにしました。その意義は大きなものです。この記事は吉田所長の『死を覚悟した、東日本全体は壊滅だ』ということばに象徴される事故現場の絶望的な状況、混乱状況を伝えています。記事が伝える状況に間違いはありません」

とも主張している。だが、「申入書」で指摘されている「死を覚悟した、東日本全体は壊滅だ」といった記述は初報の5月20日の記事には含まれていない。加えて、朝日新聞が取り消したのは初報のみだ。

「関係者を厳正に処罰」にも批判

   申し入れ書が最も重視しているとみられるのが、朝日新聞の今後の対応だ。木村社長は、会見で関係者を「厳正に処罰」すると明言している。この点を、申し入れ書は

「不当な処分はなされてはならず、もしかかることが強行されるならばそれは、現場で知る権利への奉仕、真実の公開のため渾身の努力を積み重ねている記者を萎縮させる結果をもたらすことは明らかです」

と批判している。今回の問題をめぐっては、朝日新聞社は9月12日に、前出の杉浦取締役を解職したのに続いて、9月19日には市川速水報道局長、渡辺勉編成局長、市川誠一特別報道部長の3人を解任する人事を発表している。

   新聞史に残る最近の大誤報としては、産経新聞が11年7月に「中国の江沢民前国家主席死去」と報じた件が知られている。この大誤報の出稿は東京本社の幹部が主導したとみられており、処分は熊坂隆光社長が減俸50%(1か月)、斎藤勉専務(編集担当)が同30%(3か月)、飯塚浩彦取締役(東京編集局長)が同30%(3か月)のみ。中国総局をはじめとする現場の記者は「おとがめなし」だった。

   吉田調書をめぐる誤報については、朝日新聞が同社の第三者機関「報道と人権委員会(PRC)」に審理を申し立てている。PRCは9月17日に初会合を開き、検証作業を始めている。今後、現場の記者に対する処分が焦点になりそうだ。

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