2024年 4月 26日 (金)

「歴史問題で『ゴールポスト』動かす」「心情に基づいた対日外交」 有識者懇報告書、朴大統領と韓国外交を強く批判

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   安倍晋三首相が出す「戦後70年談話」のベースになる有識者会議「20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会」(21世紀構想懇談会)の報告書が完成し、2015年8月6日に安倍首相に手渡された。戦後50年(1995年)の村山談話に盛り込まれていた「お詫び」には言及していないものの、第2次世界大戦での日本による侵略や植民地支配を認め、当時の指導者についても「責任は誠に重い」と非難する内容だ。

   それでも韓国政府は、報告書の内容が「両国国民の和解に全く役に立たない」と非難している。韓国側のコメントではどの部分を問題視しているかは明示されていないが、報告書では朴槿恵(パク・クネ)大統領が「心情に基づいた対日外交」を行っており、韓国政府が歴史問題で「『ゴールポスト』を動かしてきた」といった厳しい表現もが目立つ。こういった率直な指摘が反発を招いている可能性もある。

  • 有識者懇の報告書は韓国の対日姿勢に厳しい評価を下している(写真は首相官邸ウェブサイトから)
    有識者懇の報告書は韓国の対日姿勢に厳しい評価を下している(写真は首相官邸ウェブサイトから)
  • 有識者懇の報告書は韓国の対日姿勢に厳しい評価を下している(写真は首相官邸ウェブサイトから)

「政府、軍の指導者の責任は誠に重いと言わざるを得ない」

   報告書では、「侵略」と「植民地支配」の事実を認めている。侵略については、

「満州事変以後、大陸への侵略を拡大し、第一次大戦後の民族自決、戦争違法化、民主化、経済的発展主義という流れから逸脱して、世界の大勢を見失い、無謀な戦争でアジアを中心とする諸国に多くの被害を与えた」

という形で記述された。ただ、このくだりには、

「複数の委員より、『侵略』と言う言葉を使用することに異議がある旨表明があった」

という脚注がついている。

   植民地支配については、

「民族自決の大勢に逆行し、特に1930年代後半から、植民地支配が過酷化した」

と指摘。当時の指導者についても、

「1930年代以後の日本の政府、軍の指導者の責任は誠に重いと言わざるを得ない」

などと断罪した。

   だが、韓国は報告書に否定的だ。韓国外務省が発表した声明では、

「民間レベルで作成された報告書とはいえ、歴代内閣の認識を継承するという日本政府の公言と相反するもの」
「両国関係の好循環的発展を目指す我が国政府の意志と努力に逆行する」

などと非難。戦後の日韓関係については一方的で強引なこじつけがあるとして

「両国国民の和解に全く役に立たない」

とまでした。

「日韓基本条約を平然と覆そうと試みるのを見て、また法の支配に対する考えの違いに愕然」

   報告書では、韓国の「理性」と「心情」「感情」といった言葉がたびたび繰り返され、韓国に対する厳しい評価も多い。総論では、韓国の置かれた立場を、

「同じ朝鮮半島でも、東側陣営に入った北朝鮮が、日本は拒絶する相手だと割り切ることができたのに対し、韓国にとり日本は理性的には国際政治において協力しなければいけない国である一方、心情的には否定、克服すべき相手であるという点でジレンマが生じることとなった。戦後70年間の韓国の対日政策は、この理性と心情の間で揺れ動いてきたものであると言える」

と分析。日韓両国の国民感情のすれ違いについては「当初の期待が裏切られたと感じ、憤りを覚えるようになった」と説明しながら、日本国民が抱いた感情を、

「日本国民も同様に、当初同じ考えを持っていると期待した韓国人が、日韓基本条約を平然と覆そうと試みるのを見て、また法の支配に対する考えの違いに愕然とし、韓国人への不満を募らせていった」

と表現した。歴代大統領に対する評価も辛らつだ。李明博大統領は、「就任当初は理性に基づき日本との関係を管理するかに思われた」が、11年に韓国の憲法裁判所が慰安婦問題について韓国政府が日本と交渉を行わないことを違憲だとする判決を出すと「国民感情を前面に押し出して日本に接するようになる」。これに加えて、12年8月の竹島上陸強行が日韓関係をさらにこじらせたと非難した。

「竹島については、自ら問題を大きくする意図は有していなかった日本であるが、李明博大統領による一方的な行動により、その態度は硬化することとなった」

過去の大統領は「就任当初は理性に基づいて日本との協力関係を推進した」と一定の評価

   朴槿恵大統領に対してはさらに厳しい評価だ。盧武鉉、李明博の歴代2代の大統領については「就任当初は理性に基づいて日本との協力関係を推進した」と一定の評価をしているが、朴大統領については、

「政権発足当初から心情に基づいた対日外交を推し進め、歴史認識において日本からの歩みよりがなければ二国間関係を前進させない考えを明確にしている」
「就任当初から心情を前面に出しており、これまでになく厳しい対日姿勢を持つ大統領である」

といった具合で、

「政権が日本と理性的に付き合うことに意義を見出していない現状」

という表現もある。報告書では、総じて現在の政権が理性ではなく感情をベースに対日外交を展開していると評価していることが分かる。「ダメ押し」とも言えるのが

「韓国政府が歴史認識問題において『ゴールポスト』を動かしてきた経緯にかんがみれば、永続する和解を成し遂げるための手段について、韓国政府も一緒になって考えてもらう必要がある」

というくだりで、韓国側が原理原則を軽視していると日本側が受け止めていることを端的に表現しているとも言える。「ゴールポスト」の例えは、公の場で登場することはほとんどないが、日本政府内では広く共有されている認識だ。

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