2024年 4月 25日 (木)

「読売でさえ」楽観的と断じた 「財政健全化」の甘い試算

   内閣府が中長期の財政試算を改定し、議論を呼んでいる。財政健全化の指標である国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)が、黒字化を目指す2020年度にも5.5兆円程度の赤字としたものだが、前回(2016年1月)見通しの6.5兆円程度からは縮小するというのだ。

   だが、まだ実現の見通しも立っていない政府の歳出抑制努力を織り込んでいるほか、バブル経済期並みに生産性が高まるなど高成長を前提にしており、黒字化は全く見通せない状況というのが大方の見方だ。

  • 安倍首相の見立ては楽観的か?(16年8月3日撮影)
    安倍首相の見立ては楽観的か?(16年8月3日撮影)
  • 安倍首相の見立ては楽観的か?(16年8月3日撮影)

前回試算より赤字額が1兆円縮小

   試算は毎年1月と7月の2回まとめることになっており、今回は16年7月26日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に提出された。

   PBは、国と地方の政策経費を借金に頼らずにどれだけ賄えているかを示す指標。今回の試算では、前回試算より2020年度の歳入は赤字が0.3兆円拡大するとした。2017年4月に予定した消費税率10%への引き上げを2019年10月に延期したため、企業の決算と国の会計年度のズレにより2020年度の歳入が下振れする。

   それなのに2020年度の赤字額が前回試算より1兆円縮小する事にするためには、歳出が1.3兆円減らなければならない。つまり、政府が歳出を抑制するということになる。この「カラクリ」は、前回まで物価上昇率並みに増えると想定した2017年度の歳出を「賃金と物価の上昇率の半分の伸びにとどまる」と置き換えたことが一つ。さらに、高齢化で放っておけば1兆円規模で増加する社会保障の支出を抑えることも前提にしている。「2017年度予算での歳出抑制を織り込んだ」(内閣府)といえば聞こえはいいが、現時点で、具体的な歳出削減策の裏付けがあるわけではない。

   歳出抑制という「出」の一方、「入」である税収の前提となる経済成長は目いっぱいどころか、不可能に近い数字を置いている。具体的には、今後の経済成長率が実質2%以上、名目3%以上になる「経済再生ケース」を想定しているのだ。現実に目を向ければ安倍内閣成立後の2013~2015年の実質成長率の平均は0.6%にとどまっている。経済の実力を示す足元の潜在成長率を前提にした「ベースラインケース」(実質1%弱、名目1%半ば程度)での試算では、税収が大きく落ち込み、2020年度の赤字は9.2兆円に膨らむ。歳出改革を別にすれば、こちらの方がまだ現実に近い。

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