2024年 4月 25日 (木)

小泉進次郎氏の手腕が問われる 「農協改革の本丸」の攻め方

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   自民党は2016年9月6日、参院選で中断していた農業改革を巡る議論を再開した。推進役の小泉進次郎・農林部会長は、JAグループ内で流通機能を握るJA全農(全国農業協同組合連合会)を「改革の本丸」と位置づける。11月中のとりまとめに向け、地域農協を通じて農家に高コストな肥料や機械を販売しているとされる流通機能の見直しにどれだけ踏み込めるかが焦点となる。

   9月6日再開したのは、小泉氏が委員長を務める「農林水産業の骨太方針づくりに向けたプロジェクトチーム(PT)」。環太平洋経済連携協定(TPP)への対応を話し合うのが主眼だが、安倍政権下ではこれまでにJA全中(全国農業共同組合中央会)から地域農協の監査・指導権を取り上げることを中心とする改革を進めており、今回の「流通見直し」はJA改革第2弾とも言われている。

  • 農協改革の推進役の小泉進次郎・農林部会長(15年9月撮影)
    農協改革の推進役の小泉進次郎・農林部会長(15年9月撮影)
  • 農協改革の推進役の小泉進次郎・農林部会長(15年9月撮影)

JA独自の事業改革案は、「努力目標」にとどまる可能性も

   国内の肥料や農薬の値段が高いことを6日の会合で指摘したのは、韓国市場を調査した「日本農業法人協会」。同協会は大規模農業を展開する農業法人が加盟する団体で、独自調達でコストを下げる力のある法人も多く、JAグループとは距離を置いている。同協会によると、韓国の肥料の平均的な価格は日本の半分、農薬は3分の1だった。トラクターなどの農機具は性能が違うので比較が難しいが、基本的に韓国で売られているものの方が安かったという。日本の肥料や農薬が高い理由は「JA全農が取り扱う銘柄数が多いため、つくる方のコストもかかっていることが考えられる」と推測した。

   これに対し、JA全農は神出元一専務が「生産者の視点に立てていなかった」と反省の弁を口にし、「銘柄が多すぎる」と指摘された点については絞り込んで価格低下につなげたい、との考えを示した。コメだけで2000種類を超える肥料を扱っているという。ほとんどは中小企業が作っており、肥料の数だけ会社があると言えるほどだという。コメ作りは品質が大切とはいえ、果たしてそれだけきめ細かい種類の肥料を生産販売する必要があるのかどうか。「袋が違うだけで中身はほとんど同じものがある」という指摘も聞かれるだけに、改革の余地はありそうだ。グループを代表する立場の奥野長衛JA全中会長は「日本の農業を世界標準にしていくようしっかり努力したい」と述べた。会合終了後、小泉氏は「非常に前向きなキックオフだった」と評価し、11月の改革案とりまとめに向けて自信を示した。

   受けて立つ形になるJAグループは8日、独自の事業改革案を公表した。肥料や農薬については取り扱い数を削減して価格低下につなげる。一方で、安いとされる韓国製肥料の取り扱いを始める。農家にとって必要以上に高機能なこともある農機具について、必要な機能に絞った廉価版を開発するほか、家畜のえさとなる飼料については工場などの集約を促し、コスト削減につなげる、などとしている。ただ、いずれも目標や期限が明示されておらず、「努力目標」にとどまる可能性もある。

農水省、価格引き下げに向けた法改正も検討中

   外部からは「ぬるま湯」でやってきたようにも見えるだけに、今後、「本気度」が問われる局面が訪れそうだ。早速クギをさしたのが山本有二農相で、9日の閣議後会見でJAグループの事業改革案について「さらなる具体化や拡充をしていただけると信じている」と述べ、まだ不十分との認識をにじませた。

   安倍政権は、「小泉部会長を中心とする改革方針を全面的に支援する」(菅義偉官房長官、6日の記者会見)と、小泉氏と二人三脚で改革を推進する構え。12日の規制改革推進会議(議長・大田弘子・政策研究大学院大教授)の初会合で、安倍晋三首相は農業改革について、生乳の流通改革とともに「生産資材や加工流通構造に関する具体策について、この秋に結論を出す」と言明した。これに先立ち、今夏の農水省人事にも手を突っ込み、省内では非主流派かつ改革派とされる奥原正明氏を事務次官に就け、霞が関の官庁街に衝撃が走ったことは記憶に新しい。その農水省はJAを守るのとは逆のベクトルで、価格引き下げに向けた法改正も検討中だ。

   かつてのような有力な農林族議員が不在なことも、全農の「四面楚歌度」を高める。ただ、現実に農業を担う高齢者が次々と引退する時代を迎えているだけに、「安倍政権でなくても改革は待ったなし」との指摘もある。政界の階段を上りかけている小泉氏にとって、まさに手腕が問われることになる。

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